Ananas

フランティックのAnanasのネタバレレビュー・内容・結末

フランティック(1988年製作の映画)
3.5

このレビューはネタバレを含みます

ハリソン・フォードがヒーローではなくどことなくクズで頼りない男を演じている本作。彼が演じる主人公ウォーカーの作中での奇行を好奇心からまとめてみた。

⭐︎妻に呼びかけてられているが、自身が浴びているシャワーの音がうるさいという理由で妻を無視する。その後、妻は失踪する。(シャワーを止めればよかったのに...)
⭐︎妻が姿を消したにもかかわらず、ホテルのベッドの上で注文した朝食を食べ、うたた寝をする
⭐︎ヒロインのミシェルがホテルで警察に事情聴取された際、彼は売春婦として彼女を部屋に呼んだから事件とは関係ないと嘘をつく
⭐︎妻が浮気していないにもかかわらず、浮気をしていたと警察に嘘をつく
⭐︎屋根に乗った自由の女神像をミシェルに取らせ、彼女を九死に一生の目に遭わせる。(まぁ彼女が逆の立場ならウォーカーを支えることは難しいだろうなぁ)

自分が世界の中心だと考えているアメリカ人気質がパリではまったく通用しないのが痛快だった。花屋で情報収集する際に英語で尋ねるも店員にフランス語で返答されたり、緊急と言う理由で問題解決のための近道を探すがことごとく跳ね返されたりなど。

ロマン・ポランスキーの映画では女性が軽蔑されるシーンや過激な性描写がよく見られる。本作でも男性が女性用トイレにためらわず足を踏み入れたり、ミシェルが男性によって暴行を受けたり、アパートの住人が生々しいセックスに勤しんでいたり、おまけにハトの交尾シーンまである。数々の性的スキャンダルで世間を騒がせたポランスキー監督ならではフェチズムを私たちは見せつけられます。

ネガティブな点ばかり述べましたが、ミシェルを演じたエマニュエル・セニエは男性ばかりが登場する作中において、妖艶に咲き誇るバラのような存在でした。瞳を通して誘惑されたら何もかも奪われてしまいそうなファム・ファタールの様な魅力を作品を通じて感じることができました。個人的には本作のMVPは彼女です。

個人的に本作は傑作ではないと思いますし、似たような映画も数多くあると思いますが、主人公が異国の地で言葉の壁や喪失感に苦しむ描写は、現在海外に住んでいる私としてはとても共感できる部分があったので、十分に楽しむことができました。秀作ですね。

※屋根からアパートに忍び込むシーンの際に、主人公は転倒してキーアイテムとなる自由の女神像を屋根から落としかけますが、落ちるはずのない像が落ちてしまうシーンがミステイクとしてそのまま使われています。
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