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学生ロマンス 若き日のarchのレビュー・感想・評価

学生ロマンス 若き日(1929年製作の映画)
4.1
WWⅡ以前の日本のサイレント映画。小津の現存する最古の映画。

学生の三角関係コメディーとして秀逸なのは然ることながら、とにかくショットが気持ちがいい。
見やすくて状況が分かりやすい画角で「こちら側」と「あちら側」を設定して会話空間を作り出すことで、サイレントでもその場面の意味することが分かるようになっている。例えばスキーの宿での襖で隔てられたこちら側とあちら側。スキーに来た目的の不一致が表れていて、故に彼らは千恵子の見合いを知って帰ることになるのだ。またスキーで3人の位置関係なんかもそうである。サイレント故に、画の構造で人間の関係性を表現することが求められていたことでの必須技能だったのだろうが、とにかく見易く楽しいのだ。
映画全体としても最初の高台からの風景ショットを逆再生する形で終わるのも、実質何も進展してない話のオチとしで良い。

日本ではスキーブームが第3次まであるらしく、戦前のスキーブームは第一次。23年に第一回日本スキー選手権大会があり、25年に全日本スキー連盟ができたので、29年の本作におけるスキーは"流行りのスポーツ"という意味合いがあったのだろう。当時のスキーの様子を見るだけでもかなり楽しい。

まだ『東京物語』ぐらいしか見た事ないため、未だ小津が何が凄いのか分からない人間なので、小津のフィルモグラフィを追うのが楽しみである。

余談 めっちゃ『第七天国』のポスターが目立ってた
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