ジミーT

クローバーフィールド/HAKAISHAのジミーTのレビュー・感想・評価

5.0
どんなに精巧に作られたCGよりも、着ぐるみ怪獣がミニチュアのビルをどしゃーんと壊すほうにリアリティを感じてしまいます。
これは年齢的な郷愁もあるでしょう。しかし加齢以外にも理由はあると、言い訳を考えてみました。以下の通りです。

それがどんなにチープなものであれ、例えば着ぐるみ怪獣とミニチュア・ビルは実際に撮影現場にあるもので、その「現実」を撮影するのだからリアルなのは当たり前です。
一方、CGはそこにないものを電子的に描いて作ったものですから、アニメと実写を合成したようなもので「リアリティ」ということでは着ぐるみ怪獣がミニチュア・ビルを壊すほうに軍配があがる、というのが私の感じ方のようなんです。(注1)

しかしながらこの映画はどうでしょう。CGが多用されていたと思うのですが、「着ぐるみ怪獣がミニチュアどしゃーん」以上の「リアリティ」を感じてしまいました。
それは言うまでもなく、この映画の特殊な構造によるものでしょう。この映画は登場人物がホームビデオカメラで撮影した映像のみで構成されています。(注2)
そして通常、ホームビデオカメラはそこに現実にあるものを撮影するという先入観があります。従って撮影された(ことになっている)CG怪獣も、実在するリアルをカメラで撮影されたものとして感じられたんだと思います。「怪獣が見えたり見えなかったり」と小出しにしているのもリアリティ醸成のための方法かもしれませんが、それも登場人物がホームビデオカメラで撮影したということを考えれば不自然ではありません。

更に考えてみると、ホームビデオカメラに「ありのままの現実を撮る」という先入観がある以上、この怪獣こそはCGで通常以上にリアルに作り込まなくてはなりません。もし「着ぐるみ怪獣がミニチュア・ビルをどしゃーんと壊す」という方法で作られていたら、それがありのままの現実としてホームビデオで撮影されていることになるわけで、「着ぐるみ怪獣がミニチュアビルをどしゃーんと壊している」以外には見えなかったかもしれません。

ホームビデオカメラで捉えた都市破壊と怪獣というのは何回も使える手ではありませんが、この手法を考え、生かしきった技術にスコア5.0。

「リアルなビデオ映像」の一言で済んでしまうところですが、あえて理屈っぽく考えてみた次第です。

注1
とはいえ、「ジュラシック・ワールド」の恐竜群が着ぐるみだったらやはりシラケますね。難しい。
「ジュラシック・パーク」のシリーズはやはりあれでなくてはいけません。

注2
前に撮った映像が上書きされずに残っており、そこから登場人物の人間関係が類推できるようになっていたり、画面外からの声で撮影者の性格がなんとなくわかる作りになっているところなど上手いものです。
ジミーT

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