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キリング・フィールドのevergla00のネタバレレビュー・内容・結末

キリング・フィールド(1984年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

【政策の犠牲】

カンボジア内戦を命懸けで取材する米国特派員Sydney Schanbergと、彼を通訳として支えた現地記者Dith Pranが乗り越えた激動の日々を、実話に基づいて描いた作品。

ベトナム戦争が周辺国に与えた影響の凄まじさが再現されていました。Dith Pran役自身が、Khmer Rouge survivorだということが何より凄いです。演技未経験者と言っても、そもそも相当上手い「役者」でない限り生き残れていないはずだから、というキャスティング理由もまた凄い。後半を占める強制労働生活や逃避行が、悲しいくらい自然であることに納得しました。

突然の爆発、続く銃撃戦。
撮影場所のほとんどはタイだそうですが、兵士も被害者も本物にしか見えません。
本気度が違う。

米大使館からの国外脱出作戦(Operation Eagle Pull)はヒヤヒヤ。
散々引っ掻き回して暴れた挙句に逃げる米国。
やっぱり冷たい仏国。

クメール語には字幕が付かないので、欧米人の不安がよく伝わってきます。
必死に解放を訴えてくれた命の恩人Pranを、どうにも助けられない欧米ジャーナリスト達。

運転手のおっちゃん、しれっとフェイドアウトしましたが、彼も何とか無事に生き抜いていたらいいな…。

ポルポト政権では、Year 0より前の記憶は悪と見なされ、私財を禁じ、農村へ強制移住させられ、知識人は抹殺され、結婚の自由は無くなり、従来の家族構成は解体され、子供が集団生活で洗脳されて権力を持ち…、処刑は日常茶飯事。国全体が強制収容所と化したこの異常な世界を、そこに放り込まれて戸惑いながら現状把握に努めるPran目線で描いているため、とても現実味がありました。気絶させたトカゲは多分おかず?

知識人いないか?の問いに、泣きながら手を挙げる女性とそれを見て手を挙げる男性は、前半B52が爆破した町にバイクで現れるカップルなんですよね。「過去の告白」というより、絶望して、もう心中しようよっていうアイコンタクトですよね…。

率先して処刑に加担する女の子の憎悪に満ちた瞳。手荒く救ってくれたのが、あのクルマ好きの男の子。生死の分かれ目は子供の気分次第。どこで因果が待ち受けるか分かりません。

個人的にサントラは微妙に感じました。また、前半のSydneyがPranに対して随分威圧的なので、最初は主従関係に見えてしまいました。しかし、戦地で育まれ、国境を越え、更には運命も超えたかのような友情がノンフィクションであるということに、人間も捨てたもんじゃないと思わされました。

カンボジアではPTSDや教育投資格差が今でも続いていることを考えると、大国が始めた代理戦争は本当に罪深いことなのだと改めて思いました。

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Sydneyのパスポートの誕生日が、ご本人ではなく、演じたSam Waterstonのものでした。

Dith Pranを演じたHaing S. Ngorは、住んでいたLAのChinatownで、金色のベンツから降りた所を”強盗”に射殺されました。金のRolexと24Kのペンダント(祖国で亡くなった妻の写真入り)が見つからないものの、現金やベンツはそのまま。3人組アジア系ギャングが捕まりましたが、暗殺説もあるよう。彼の人生も壮絶…。
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