トニー・スコットをナメるなよ
「ザ・ファン」
檻から逃げだしたライオンが街中でいくら暴れ回っても人は社会的な"闇や歪み"を介入させて事の推移を考察するわけがない。
例え人の手で育てられていようともライオンは生まれた時から既に充分に猛獣だから。
同様に「ザ・ファン」のギナ(ロバート・デ・ニーロ)も平凡で透明な輪郭に収まっていた営業マンが、挫折や失意、孤立によって次第に猛獣化していくわけではなく、画面に現れた時には既に充分すぎるほど猛獣だったのです。
その振る舞いが殺人や誘拐など紛れもなく犯罪でありながら、その凶暴さが観ている私たちを惹きつけるのはギナが何かを掴もうとしているからでも、何から逃れようとしているからでもなく、トニー・スコットが神話のようにフィクションの輪郭に見事に収めているからです。
ひとこと、面白い!