不特定多数の人間が予期不可能な形で蠢めく不整合な世界
ジョン・フォード
『鮫虎島脱獄』
(冤罪)と云う今日的な主題とはいえ、21世紀の現在から見てもその訴訟力には目を見張るばかりです。
何がどのように作用するか分からない無方向の面白さが映画史には確実に存在する。
約35年後『キル・ビル』という映画にて、同じ役名で21世紀のスクリーンに自分を炸裂させたデビット・キャラダインは俳優とし>>続きを読む
リアルタイムで観た映画で初めて
自意識の地獄を知覚させられた
私にとってのトラウマ問題作
日本映画というよりも今後未来の世界映画史にも聖痕を残しえる掛け値なしの傑作だと云っても決して過褒ではありません。
理想と現実、決断と逡巡、邁進と諦観の境目を、これ以上あり得ないという繊細さと太々しい>>続きを読む
撮り損ないなど一切ない。
商品としても第一級なのに。
サム・メンデス
『1917 命をかけた伝令』
ひたすらキャメラが主人公を追いかける(一人称形式)だけで、かくも飽きさせず観客を牽引していく手腕>>続きを読む
語りのダイナミズムと話芸のニュアンスを覚醒させた功績は、現在もなお、誰にも見通しがつかない(コメディ)そのものへの問いかけとして刻印されているのだ、とはっきり分かりました。
映画という揺り籠に安らぎながら乱行する傍若無人ぶり
プレストン・スタージェス
『パームビーチ・ストーリー』
ただひたすら自らの(ご都合)を押し出して、繰り返す。
この無償さこそがプレストン・スタ>>続きを読む
今となってはこんな女性を肯定する価値観も懐かしい。
もしかしたら古めかしい。
ですがそれこそがいかにスタンバーグが後世に与えた影響が大きいものだったかの証明でもあるのです。
ジョセフ・フォン・スタン>>続きを読む
この怖さ、もしかしたら21世紀には過ぎた贅沢かもしれぬ。
ロブ・ライナー
『ミザリー』
本来(怖さ)というものはきわめて原始的なものだと思う。
青年期に、そんな原始的な体験を、例え疑似的に於いても知>>続きを読む
中盤の乱痴気パーティとラストの(届かぬ声)は既に5年後の『甘い生活』を予見しているようです
フェデリコ・フェリーニ
『崖』
小悪党の良心への希求は前作『道』と共に観ているこちらの悪意を忘れさせてく>>続きを読む
猖獗(しょうけつ)をきわめるトラウマに囚われず、生動する状況の中で、登場人物がその条件と戦いながら自分の可能性を押し広げていくさまが画面に活写されてこそ私たちは共感し、その共感を通じて作品が自分の足で>>続きを読む
あの異様な『将軍たちの夜』の監督作品というだけでも興味津々。
この映画作家が有名なサガンの小説を基に、いちど結婚に失敗した女性の自意識をどのように画面に定着させるのか。
年上の恋人イプ・モンタンと15>>続きを読む
普段映画をほとんど観ない友人が言っていた。
(普通に感動した)と。
その言葉に何の偽りもなかった。
普通に感動する。と同時に次なる胎動が微塵も感じない、と。
ベン・クックマン
『アーニャは、きっと来る>>続きを読む
観る者を、しかもそれが手練(てだ)れであればあるほど困惑させる映画としてロベール・ブレッソンの「ラルジャン」と共に記憶に残りつづける
カール・TH・ドライヤー
「怒りの日」
15世紀の中世ヨー>>続きを読む
偉大な映画作家として、芸術家として尊敬してますがさすがに強いられる忍耐に疲労困憊しました💦
テオ・アンゲロプロス
『シテール島への船出』
過去にいちど寝落ち挫折してます。
2度目の今回で鑑賞完了。>>続きを読む
初見。
本作を含めて2度映画化。日本では劇団四季の演目であまりに有名ですが、そんな事より(社会派)の印象が強いこの作家にこのような乱舞を発見できた事自体が拾い物でした
監督スタンリー・キューブリック、脚本ダルトン・トランボ、製作総指揮兼主演カーク・ダグラス、このドンキホーテ3人が立ち会ってしまった異様な迫力
スタンリー・キューブリック
『スパルタカス』
他人の喧>>続きを読む
この映画で描かれる徹底して低徊する人生経路は、怪物シュトロハイムの裏返しのダンディズムである
エリッヒ・フォン・シュトロハイム
『グリード』
エリッヒ・フォン・シュトロハイムの暴君エピソードは死後>>続きを読む
名作再見が続いています。テキサスの分厚い発達史に触れるだけでも興趣に溢れてます。
ジョージ・スティーブンス
『ジャイアンツ』
19世紀半ばのメキシコとの険悪な関係が、世界中誰もが周知となった今日でも>>続きを読む
この女性はターミネーターか。
シャンタル・アケルマン
『ジャンヌ・ディエルマン ブリュッセル1080、コメルス河畔通り23番地』
徹底的に時代の話柄に捉われずひとりのシングルマザーの(世話焼き)を>>続きを読む
撮影中、(資本主義の権化)とまで言われた大富豪ハワード・ヒューズの撮影妨害の嫌がらせに堂々と拮抗し、完成した映画は大ヒット。
その背景を汲み取れば尚、ホークスの活動寫眞家魂がありありと伺えます
澄み切ったアルプス山麓が背景のアヨシー湖畔の風土に似つかわしくない視姦の甘美
エリック・ロメール
「クレールの膝」
結婚を間近に控えた中年外交官(ジャン=クロード・ブリアリ)が、まだ成熟しきらない>>続きを読む
80年前のブラックユーモア。
いまだに一点の瑕疵も枯凋のきざしも見えないその完成度に、笑いと驚きを超えて鳥肌さえ立ちます。
解説不要。
ジャンルとしての映画の可能性をスターリンが権力を掌握していた旧ソ連時代に、(喜劇)を自分の双肩にかけて追求した勇気は賞賛に値します。
21世紀の現在、バルネットの映画を観れる事自体に幸福を>>続きを読む
80年代の取りこぼし
ジョン・シュレジンジャー
『コードネームはファルコン』
演出がこれだけ匠なのに映画そのものの仕上がりが凡庸な印象しかもたらされないのは『真夜中のカーボーイ』の(苦悩)が全く希薄>>続きを読む
これも80年代の取りこぼしです。
一筋縄ではいかない政治家たちとサンフランシスコ住民の多角性を画面に定着させた力作。
ロバート・エプスタイン
『ハーヴェイ・ミルク』
映画の価値とは無関係なので発言は>>続きを読む
一見散漫な構成に見えるこの作品の至る所に、後々に頭角をあらわす映画作家たちが起爆させていく地雷が装填させているようです。
80年以上前のスクリーンには既にこんなダークヒロインが堂々と存在していた。
演じたのはもちろんベティ・デイビス。
小気味がよいくらいに悪女節が炸裂しています。
ジョン・ヒューストン
『追憶の女』
直>>続きを読む
妻を若い男性秘書に寝取られと早合点した高名な指揮者による妄想と実践が錯綜する世界。
何もなしえず、見つけられず、立ち去ることも出来ない救い難さが第一級のコメディとして現れます。
恥も外聞もなく喝采して>>続きを読む
帰途の道すがらひとりそっと涙を拭うのに相応しい。
40年前、大阪の名画座(大毎地下劇場)にて以来。
当時のさざなみが紛れもなく安易な感傷でなく本物の感動であったと確信できました。
自分をクラシックの虜>>続きを読む
無垢だけど貪欲。
こんな形容矛盾でしか表しようがない低いテンションの精神が見つけてしまう鮮やかな拠り所
原題(Steamboat Round the Bend)のRound the Bendには[紆余曲折]の他に[大混乱、ぶっ飛んでいる]という語義もあります。
まさに頭のてっぺんから足の先までフォードの>>続きを読む
働き盛りのスペンサーとキャサリンの初共演作。
後年の『招かれざる客』のドレイトン夫妻の新婚時代を描いたような風情に溢れてます。