撮り損ないなど一切ない。
商品としても第一級なのに。
サム・メンデス
『1917 命をかけた伝令』
ひたすらキャメラが主人公を追いかける(一人称形式)だけで、かくも飽きさせず観客を牽引していく手腕はお見事です。
ですがそれだけでこの映画を賞賛するには躊躇いがあります。
ひとつは主人公が相棒の戦友を失い単独行動になってから遭遇する戦場のさまのひとつひとつが(価値)を巡る問いかけだけに終わってしまい、幾重にも重ねられるうちに印象が散漫になり、特化した倫理の輝きを提供出来ていない気がしたのです。
撮り損ないの場面など何ひとつなく(商品)としても一級品であるのに、観終えた時には、任務を遂行し終えた主人公ウィル(ジョージ・マッケイ)のように抜け殻になった虚脱感が先に出ていました。