YasujiOshiba

ブレインデッドのYasujiOshibaのレビュー・感想・評価

ブレインデッド(1992年製作の映画)
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YTで鑑賞。M.クロンプの「ゾンビの小哲学」に導かれ、このゾンビ・スプラッターの佳作を知る。主にメープル・シロップで作られたという約300リットルの偽血のなかで迎えるクライマックスまで、いかがわしくも強力な占いによって導かれながらの、 パキータとライオネルの地獄めぐり、いやはや腹一杯で胸いっぱい、ゲロが出そうなほどに楽しみました。

始まりはキングコングへのオマージである髑髏島(Skull island)。そこから、ニュージーランドの首都のウェリントン動物園に連れてこられた小さな異形のサルがストップモーションなのも、とうぜん初期のキングコングへのオマージュなのだろう。

時代設定が1957年なのもよい。登場人物の衣装も、街をゆく自動車やトラムも、すべてがノスタルジックだから、そこに紛れ込む感染性の病原体が毒々しい笑いと寓意として機能しやすいのだろう。

それにしても、怪物的なまでに過保護な母親の依代となったエリザベス・ムーディの演技がみごと。それがなければ、ラスボスさながらの異形があそこまで力を持たなかったはず。

そして芝刈り機と台所のミキサーの破壊力。それがチェーンソーのような非日常的なものではなく、むしろ日常の風景の中にあるあたりまえのものだからこそ、その逸脱的な破壊力が巻き上げる血飛沫と肉片が、ぼくらの生きる世界から切断され投げ出されたアブジェクト(おぞましいもの)の本質を浮き彫りにしてくれたというわけなのだろう。

それにしても、このピーター・ジャクソンが30年後にナオミ・ワッツで『キング・コング』(2005)を撮るんだよね。べつに知り合いでもなんでもないけど、ぼくは彼と同い年。なんとも感慨深いものがある。
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