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いまを生きるのbutasuのネタバレレビュー・内容・結末

いまを生きる(1989年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

とても良い映画だった。まぁ物語の説得力はほとんどロビン・ウィリアムスの存在感に頼っているのでズルいといえばズルい映画なのだが、でも結局これで成り立っちゃっているんだから凄い。若き日のイーサン・ホークも良いね。ただ自殺してしまう青年ニールを演じたロバート・ショーン・レナードが圧倒的にMVP。

不良校に型破りな教師が来て更生していく話ならありがちだが、本作の舞台は全寮制の超エリート進学校であるという点がとても良い。親の言いなりにこの学校に入れられた彼らは、新しく来た教師キーティングに影響を受け、彼に倣って「詩人の会」を結成して詩の作成や朗読を行う。これを学校に隠れて夜にこっそり洞穴でやっているというのが何とも品が良く素晴らしい。勉強ができるというだけではない"賢さ"を持つ彼らは、キーティングの授業を通じて、自分らしく生きることや今この瞬間を生きること、真の「自由」について考えていくようになる。

個人的にとても好きだと思ったのは、キーティングのスタンス。「自由」になるべきだ、と悪目立ちして自己主張をする生徒に対し、彼は応援するのではなくたしなめるスタンスをとる。「そんなことで退学になっては意味がない」と。本番直前にニールが父親に演劇を反対されたときも、別に親に認められなくたって良いじゃないかとは彼は決して言わない。「残り僅かな時間でも自分の熱を伝えてしっかりと父親を説得してみせろ。それが出来ないなら卒業してから好きな道を行け。」という彼の意見は、とても理屈が通っていて、熱血教師ではなくちゃんと芯が通った大人の意見であり、とても共感を覚えた。

それだけに、ニールの自殺は本当にやるせなかった。キーティングのスタンスが決して間違っていたとは今でも思わないのだが、じゃあどうすれば良かったのか、ずっと考えてしまっている。言い訳をするでもなく悔いを述べるでもなく、ただ一人のときに涙し、寂しそうに教室を去ろうとするキーティングが本当に切ない。だから最後に生徒が数名が(全員ではないところがまた良い)立ち上がって「キャプテン!」と彼を呼んだときには、本当にグッときてしまった。

誕生日に親から去年と全く同じ勉強セットをプレゼントされて落ち込むイーサン・ホーク演じるトッドに、ニールが勉強セットを投げ捨てさせ、「どうせまた来年も同じものをもらえるんだから」と笑ってみせるシーンもすごく好き。

とても良い映画だった。
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