「君の匂いをかいでおけば良かった」
何かを失うSF×恋愛、「こぼれる記憶の海で(記憶)」も「ロスト・エモーション(感情)」もお気に入り。今作(五感)はおそらく1番何かを失っているため、愛し合った2人が世界に抗おうとする〜感は薄めながら、センスの良い映画だなと思った。私がCivil Warを気に入った理由の1つが写真の力をまざまざと見せられるからなのだけど、この作品の世界観や、感覚と共に正気を失っていく世界の描写にそれと似たものを感じた。好きな食べもの、毎日違う表情を見せる空、季節毎の音や匂い、ページをめくる手が止まらない小説… 生きる上で感じる楽しさを既に知ってしまっている中ですべて取られるのはあまりに耐え難い…と見終わったあと考える(だから日々感謝せえという)。終わり方もセンスええ…と思いながらも、切なさを超えた恐怖が襲う。もしかしたら"愛する人が傍に入れてくれればそれで良い"の究極体映画なのかもしれない。エンドロールで音楽担当がマックス・リヒターなことを知った、それは劇伴が良いわけだ。