ぴのした

フェリーニのアマルコルドのぴのしたのレビュー・感想・評価

フェリーニのアマルコルド(1974年製作の映画)
3.9
豊かな暮らしとはこういうものかもしれない。イタリアの田舎町の一年を描いた群像喜劇。

綿毛が飛べば町全体で「春がきたぞ!」と踊り出し、少年たちは学校でくだらないイタズラに精を出す。

ファシスト党が町を訪れれば嫌がらせを受け、夏は頭のイカれた叔父さんに振り回される。霧の日には妄想でダンスパーティー。

ひょうきんな豆売りは豪華なホテルに忍び込んでアラブの女たちと遊ぶ。豪華客船が来た日には町中みんなが船を出して手を振る。

1つの家族を描いているようで、1つの少年グループを描いているようで、1つの町を描いているような。誰が主役でもなく、町全体を巻き込んだドタバタ感が面白い。音楽も相まってクストリッツァの映画を彷彿とさせる。1人だけ画面に向けて話すナレーターがいるのもオツ。

イタリア人というかイタリア映画というか、このくだらないことで一喜一憂してすぐに踊り出すイタリアの気風がたまらなく好きだな。

特に雪が降った日のシーン、映画館で映画を見てるのに、誰かが「雪が降ってるぞ!!」と言ったのを聞いて大人も子供も構わず外に飛び出すシーンなんかは最高。我々の人生もこうでなくては。