ぴのした

パラダイスの夕暮れのぴのしたのレビュー・感想・評価

パラダイスの夕暮れ(1986年製作の映画)
3.9
カウリスマキ「労働者3部作」の一作目、らしい。冒頭のゴミ収集車での作業の1日をジャズに載せて見せるシーケンスだけで痺れる良さがある。かっこよさともオシャレさとも違う、なんとも言えないこの感じ。

ゴミ収集車に乗り込む姿はさながらパターソンのようで、あの映画を先に見てたからなんとも思わなかったけど、パターソン自体が仲の良いカウリスマキへ贈るジャームッシュからのオマージュ作品のような位置付けだったのかなと思った。

冴えない男の情けない感じがなんとも愛おしい。剥き出しの花束を渡すために外で待っているのも、デートの仕方がわからずに謎のビンゴの店に連れて行って振られるのも、捨ててあったレコードを拾って、わざわざレコードプレーヤーを買って聴いてるのも、全部呆れるほど人間くさくてなんだが可愛らしい。

ここまでカウリスマキ作品を見てきて見慣れたカティ・オウティネンも、いつもと少し違うファンキーな役柄で、これはこれで素敵だ。

何より今回は留置場で出会った友達との関係性がとても良くて、良いやつ〜となるシーンが多かった。

子供の貯金箱から食費を抜いて友達に渡すところは、貧困層らしい強い仲間意識と身内への加虐性が絡んだ表現に見えて、なんとも言えない気持ちになった。

地面に落ちるゴミを全く気にせず絆創膏を貼るシーンもすごく映画的で良かった。似合わないサングラスをかけて待っているシーンは笑えた。