「その中に侵入するのが不可能な形で、近似的にマフィア的と呼べるような連鎖からできているものへと、ますます降りてゆく(sempre più digrada nella impenetrabile forma di una concatenazione che approssimativamente possiamo dire mafiosa) 」というシャーシャの原作を、ロージはみごとに映像化。サルヴァトーレ・ジュリアーノの謎の死に迫った『シシリーの黒い霧』(1961)のスタイルが、ここではいっそう高められていて鳥肌もの。
脚本にはトニーノ・グエッラがいて、音楽はピエロ・ピッチオーニとアストル・ピアソラにショパン。映像もすごい。撮影はパスクワリーノ・デ・サンティス。同じロージの『シシリーの黒い霧』では名撮影監督Gianni Di Venanzoジャンニ・ディ・ヴェナンツォのもとでカメラを操り、『遥かなる帰郷』の撮影現場で亡くなったロージの盟友。ほかにもヴィスコンティやフェリーニの撮影監督としても活躍。
ところでこの映画、日本版の円盤が出ていない。ダメじゃん。
追記:2025:10:10
Radiance Films からブルーレイが出るというツイートに、おもわず食指がうごく。Amazon.jp を見るとすでに Kino Classics から4800円で出ている。これは 2021年発売みたい。コメンタリーはアレックス・コックスだけど、ボーナストラックはそれだけ。
- Archival interview with director Francesco Rosi (1976) - Archival interview with Francesco Rosi and Lino Ventura (1976) - New interview with Gaetana Marrone, author of The Cinema of Francesco Rosi (2025)
うう、どうしようかな...
ところで、ブルーレイの検索をかけているとき、この映画のタイトルがフランスのシュールレアリズムの手法「優美な遺骸( le cadavre exquis)」のことだという記事にであう。
ここにはその後、フランス語のタイトルが「le cadavre exquis」となり、例のシュールレアリズムの手法と結びつけられることになったという。なるほど面白い連想だけ思ったらしい。しかし、タイトルの意味はそうではないということ。それは、あの時代が「死体の時代」(un periodo di cadaveri)だったということにほかならない。