18人の監督による「愛」をテーマにした短編オムニバス。パリ20区のうち18の区を舞台に、1区5分間で語られる。
…すごい。笑って泣いて、満腹。
同じ5分とは思えないそれぞれの重み、または軽みがありました。
(話は少し逸れますが) かのアインシュタインは、難しい相対性理論を「熱いストーブの上に手を置くと、1分が1時間に感じられるが、きれいな女の子と座っていると1時間が1分に感じられる。それが相対性だ」と説明したそうですが、
映画の「5分」とはどういう長さなんだろうか? と、考えてみた。
●本来は長い物語のその時間だけを切り取ったワンシーン的な「5分」や、
●限られた時間があるからこそ!とわかっていてもその後が気になる劇的な「5分」、
●無味無臭でサッパリわからないまま通り過ぎる、これも「5分」
などの印象をそれぞれ持ったのだけど。
濃いとたった「5分」には思えないけど、薄くても「5分」なら長くは感じなかったりして。「5分」ってどれだけの時間なんだっけ。と混乱しながら見る120分は、なかなかの重量感がありました。
表現方法もいろいろで、愛や恋には、スローモーションのときもあれば、早送りのときもあるってもんで。「5分」は一概に計れない。
それに、粒揃いの18作品が並んでいるからと言って、面白いとか退屈だとか、愛や恋に優劣をつけるなんてバカげているし、愛も恋も時間もすべてが曖昧なものなのに相対性理論を持ち出すことなど以ての外。慣れないことをするもんじゃない。
結論。「5分」とは、
名監督たちが十二分に「愛や恋を語れる時間である」ということ。//
それだけはわかりました。
以下、お気に入りの5本。
【マレ地区】ガス・ヴァン・サント
どこか中性的なのにタンクトップになるとナイスマッチョの青年と、坊主頭にギャップのある鮮やかなブルーのコートを着た青年が登場する。いずれにせよ超イケメン!と思ったらガス・ヴァン・サント監督か!激しくガッテン。
【バスティーユ】イザベル・コイシュ
離婚を決意した男の話。しみじみと泣けてくるハートウォーミングなお話だけど、最後にスパイスを効かせるのは忘れない。大人な味でした。
【エッフェル塔】シルヴァン・ショメ
エッフェル塔はシルヴァン・ショメが貰ったどー!彼のユーモアはどこにいてもピカイチだ!突き抜けたマイワールド!
【フォブール・サン・ドニ】トム・ティクヴァ
春が来て夏を迎えて、突然に冬がやってくることがあるんだよ。そのことをたまには想像すること。今いる季節にちゃんと思いを馳せることの大切さを教えてくれる。
【14区】アレクサンダー・ペイン
そして、最後はまさに「パリ、ジュテーム」な一作。名女優マーゴ・マーティンデイルがそこに存在してこそ。
どこからともなく溢れてきた、なんとも形容しがたい“感情”は、どこか懐かしくて新しいものでした…。