甘味

クローズ・アップの甘味のレビュー・感想・評価

クローズ・アップ(1990年製作の映画)
4.1
キアロスタミ追悼上映にて、初観賞。
あーもう、なんて言うか…一体、何でこんな映画が撮れてしまうのか。

映画監督(独裁者と小さな孫のモフセン・マフマルバフ)の名を騙り、ある家族を架空の映画製作に巻き込んだ一人の貧しい青年が詐欺罪で逮捕された。
この事件を元に作られているんだけども、出演者は何と全て当事者たち。犯人の青年、そして被害者家族を始め、巻き込まれた人々がそれぞれ事件当時の自分自身を演じている。

どこまでが虚構でどこまでが真実なのか全く分からない。どこまでが演技なのか?その言葉は嘘?本心?そもそも演技って何なんだろう?…頭と心が引っ掻き回される。
本作がキアロスタミの最高傑作と言われる所以が良く分かった。完全に映画という枠を飛び越えてしまっている。
監督の揺るぎないスタンスと、挑戦と、才能と、努力、そして人徳。何か一つ欠けてもダメなんだろうなぁ。キアロスタミにしか撮れない、唯一無二の傑作。

冒頭の道を転がるスプレー缶が忘れられない。そこからオープニングクレジットに入るタイミングが天才過ぎて震えた。そしてラストは、ただ泣いた。

キアロスタミ監督よ、永遠なれ。
甘味

甘味