すずき

コンタクトのすずきのレビュー・感想・評価

コンタクト(1997年製作の映画)
3.5
天文学者ケリーは、地球外知的生命体の存在を確認し、接触するのが夢だった。
だが科学界の権威であるドラムリン博士の横槍で、研究の予算が打ち切られてしまうが、大富豪のハデンがスポンサーとなり研究は続けられた。
そしてある日、ついにケリーは知的生命体からのメッセージを受信する事に成功する!
そのニュースでケリーは世界中の注目を浴びるが、ドラムリンの成果の横取りや軍部の介入、宗教家からの批判など、更に多くの困難が待ち受ける…。

タイトルが示す通り、異星人とのファーストコンタクト物。
メッセージを受け取り右往左往する人類たちの愚かさに阻まれながらも、目標に向かって戦い続けるケリーを描く。

宇宙人の送ってきた映像がヒトラーだった事から(人類初のテレビ放送という理由だけである)彼らの政治思想を危惧したり、宗教家が研究に反対してデモしたりテロしたり、ここにきて権力争いしたり、野蛮な下等生物丸出しの人類!
まあ宇宙人も人類全体に叡智を授ける訳でもなく、目的がイマイチよく分からん。まあ地球人とは違う精神構造かもしれんし、しょうがないか。

主人公も主人公で、結構問題ある人物。
宇宙人を見つける事が自分の夢であり目標で、それだけに突っ走る様な女性なんだけど、それってエゴだよね、と思う所も。
映画では研究の成果が出たからいいものの、そうでなかったら確実に研究予算を食いつぶす穀潰しの変人だ。いや、そもそも科学者ってそういうものか。

しかし何よりノレなかったのは、この映画の「神」の描き方。
宗教映画ほどあからさまではないけれど、キリスト教的な価値観が映画全体の根底にあったような気がする。
劇中、人類全体の代表を決める面接で「神」について聞かれるシーンがいくつかあるんだけど、おそらくユダヤ・キリスト教の所謂「唯一神」についてしか考慮していないよね…。仏教徒や神道には居場所なさそう。
「候補者の1/3がアメリカ人だ」と審査の不公平性を訴えるセリフもあって、映画としては少しはフォローしてるんだろうけど。
アメリカを舞台にしたアメリカ映画なんだからそりゃそうだろ、と言われればそりゃそうなんだけど、私はイマイチそこら辺のメッセージ性にピンとこなかったのだ。

総評としては、よく出来たリアルなSF映画で悪くなかった。
けど個人的に、主人公を始めとする登場人物と宇宙人、そして映画全体の宗教観に、感情移入が出来ずに一歩踏み込めなかった映画でした。