考えさせられる深い話だった。
困っている人たちを違法な手段で助ける女の話。
妊娠したけど事情により産むことが出来ない女たちに人口中絶を施術する。作品の舞台、1950年代イギリスでは人口中絶が法律で禁じられていた。高いお金を払えば適法に行うことも出来たようだが、金持ち以外は裏の手段を選ぶしかなかった。
似たようなことをしていたとしても、それが適法か違法かで社会の扱いは全く異なる、ということを映しているのか。
ロクなものを食べていない独り者のご近所さんを食事に招待するのと同じ善意で行なっているのに、法に触れるとなると途端に悪者になる。
法律は所詮人間が作っているものだから矛盾や欠陥が入り込む余地がある。法に沿って法廷で裁かれるのは社会秩序のためには当然だが、人としての評価は別なのではないか。
しかし、実際にはそうはいかない。家族であっても簡単には赦せないこともあるだろう。その心の動きを観る映画なのか。
先週観た『4ヶ月、3週と2日』も同じく違法な人口中絶を扱った作品で、弱者が弱者を搾取する話だったが、これは弱者が弱者を助ける話だ。でも、やはり不条理。
昨夜観た『ル・アーヴルの靴みがき』に続き、これまた色使いにこだわった作品。緑と茶色。いろんな深さの緑を並べて重ねて遊んでいる。