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ジャズ・シンガーのtakのレビュー・感想・評価

ジャズ・シンガー(1980年製作の映画)
3.7
「ジャズ・シンガー」といえばトーキー初期の名作として名高いミュージカル映画で、”お楽しみはこれからだ!”の台詞でも有名なアル・ジョルスン主演作がよく知られている。80年製作の本作は、ジョルスン「ジャズ・シンガー」を現代風にアレンジしたリメイク作品で、米国音楽界のスター、ニール・ダイアモンドが主役を演じている。

自由の女神を見下ろすオープニングシーンとラストのライブシーンで流れる America(自由の国アメリカ) をはじめ、ほぼ全曲をニール・ダイアモンドが書き下ろしている(スコアは「エデンの東」のレナード・ローゼンマンが担当)ので、もう彼の一人舞台と言ってもいいだろう。他にもバラード Hello, Again が流れる美しい浜辺のシーンは印象的だし、カントリー(ブルーグラス?)風あり、ユダヤ教会で流れる賛美歌ありで、バリエーション豊かな聴き応えあるサントラである。

ニール・ダイアモンドはこのサントラの中で何曲かをフランスの大物歌手ジルベール・ベコーと共作している。その一曲がスケール感ある名バラード Love On The Rocks である。”座礁した愛”と題されたこの曲は、主人公がソングライターとして認められるきっかけとなった曲として本編に登場する。しかし、不本意にもパンクロックにアレンジされてしまい、主人公は現実の厳しさを知ることとなるのだった。Love On The Rocks はベコーのアルバム「愛の終わりに」にもタイトル曲として収録されている。こちらも是非聴いて欲しい。サントラのバージョンよりも数段ドラマティックで感動的なはずだ。

有名作ではないが、決して失敗作ではない。父親に扮したローレンス・オリビエはユダヤ人司祭を見事に演じているし、クラシックのリメイクを、徹底した音楽エンターテイメントに仕上げたリチャード・フライシャー監督の職人芸も再評価されて欲しい。
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