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素晴らしきヒコーキ野郎のtakのレビュー・感想・評価

素晴らしきヒコーキ野郎(1965年製作の映画)
3.6
個人的プロジェクト「名作映画ダイジェスト250」(ロードショー誌80年12月号付録)制覇計画のためセレクト。

高校時代、吹奏楽部でこの映画の主題曲を演奏したことがある。日頃は主旋律少なめで、音を厚くするために下支え、時々うるさがられるのは、僕を含むトロンボーン部隊。この主題曲は、スライドを派手に動かす部分も、かっちょいい主旋律もあって、これ以上あろうかという大活躍ができるマーチの名曲。ラジオ番組で聴いて映画音楽だとは知っていたけれど、本編を観たことがなくて。あれからウン十年経って初めて映画を観た。

飛行機が誕生してまだ間もない1910年代。各国の飛行機乗りが集まって、ロンドンーパリ間の飛行を競う大会が、イギリスの新聞社主催で開催されることになった。主催者の娘と恋仲であるイギリス軍人、アリゾナからやってきたワイルドなアメリカ人、女ったらしのフランス人、子だくさんでオシャレなイタリア人、堅物ドイツ人、技術にすぐれた日本人。各国から選りすぐりの強豪が集まってくる。

レースが始まるのは上映時間の半分過ぎたあたりで、そこまでは様々な飛行機が登場して、多彩なエピソードが散りばめられ飽きさせない。しかも133分の上映時間なのに、レース場面前にはインターミッション(休憩時間)まで挟まる。ファミリーでも楽しめる娯楽作品としての配慮なのかな。近頃の長いばっかりのハリウッド映画とはえらい違いだ。今どきの製作陣に爪の垢でも煎じて飲ませてやりたい。

物語の主軸はお転婆ヒロインがイギリス代表とアメリカ代表の間で揺れる三角関係。兄エドワードに似たイケメン英国人ジェームズ・フォックス、西部劇や戦争映画で活躍したスチュワート・ホイットマン。ちと地味な印象の主人公二人に、ヒロインは「ライアンの娘」のサラ・マイルズ。

妨害工作をする悪党がいたり、常に反目するドイツとフランスが決闘騒ぎを起こしたり、颯爽と登場するニッポンの美男子(石原裕次郎)にヨーロッパ人が騒いだり、フランス代表はレースの最中に恋にも真剣だったり。気楽に楽しめる。

ドイツ将校を演ずるのは「007/ゴールドフィンガー」の悪役ゲルト・フレーべ。当時の英米映画ではドイツは悪役として扱われがち。しかも本作では頭の堅いマニュアル野郎役で、コメディ演技を見せる奮闘ぶり。ステレオタイプに描かれることは不愉快な部分もあったに違いないが、そうした役をこの時代にこなしてくれた彼は、貴重な存在なのだと再認識。

レース場面はクライマックスこそ緊迫感があるものの、クラシックな飛行機がイギリスの田舎や海辺の古城がある風景を飛ぶ姿は切り取りたい美しさ。
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