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大空のサムライのmhのレビュー・感想・評価

大空のサムライ(1976年製作の映画)
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帝国海軍の撃墜王、坂井三郎の自伝を元にした映画。
いっぷう変わった海軍描写が魅力だったんだけどそれは後述。
エピソードの重ね方が散発的で主だったものがなかった。四コママンガをアニメ化したときのような構成。
藤岡弘演じる主役の坂田三郎は、上官にもダメ出し余裕というキャラ。相手が許してくれたからよかったもののエースパイロットじゃなきゃ営倉もの。
そんな生意気な主人公を成立させるためか、軍紀のゆるい帝国海軍が新鮮だった。
上下関係にうるさくない欧米の軍隊のほうが好きなので、日本もこうだったらいいのになぁと思いながら見た。
坂井三郎の軍歴は、志願兵で佐世保海兵団からスタートしている。学歴社会の帝国海軍にはひとこともの申したかったようで、作中でも思いっきり、兵学校批判をぶちかましてた。
戦争ものかつ自伝もので、これが成り立つのは素直にすごい。

サイダーをぶちまけてコックピットがずぶ濡れになるくだりが、かなり面白かった。
ずぶ濡れになって嫌な予感→三角巾で拭くのに四時間。→吹き終わった三角巾を、嫌な予感とともに外に投げ捨てる。→食事は巻き寿司。→敵機来襲!→巻き寿司も投げ捨てるけど、頭上のガラスに当たって座席に後ろに。→負傷!→止血しないと死ぬ→三角巾がない!→さっき捨てたんだった→それにしても暑い→マフラーがあった!→これで止血出来る!
応援上映だったら、叫んでるところだった。「巻き寿司もあるよ! 思い出して!」

映画鑑賞後はだいたい関連情報をググってるんですけど、この映画の妙な感じの答えはすぐに見つかった。
戦後の坂田三郎は一時期、ネズミ講団体「天下一家の会」の広告塔になっていて、この映画の出資者はその団体だったとのこと。
のちに社会問題となり、団体主催者は逮捕、天下一家の会は解散することになる。
この映画でいちばん面白いのは、この欄外情報かも知れない。
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