Shizka

アラバマ物語のShizkaのネタバレレビュー・内容・結末

アラバマ物語(1962年製作の映画)
4.2

このレビューはネタバレを含みます

最初は、ああ、これ隣人に怖い人がいて、その人との友情でも描くのかな?と思っていたら、いきなりのトライアル。裁判に思いっきり意識を持っていかれて、え?まだこの後あるの?と思ったら最初に立ち戻っての終着。

構成として裁判に割かれている時間が長いなとは思ったし、それで最後のオチが霞んでしまったような感はあるものの、とても良いお話だった。

アラバマとか、アの付く州はどこにでもあるようなイメージなので最初南部とは思っていなかったんだけど、黒人のトライアルが出てきてようやく南部なんだと悟る。

南部の黒人差別は有名だし、白人も頑固すぎてどうにもならない地域。そこのトライアルとなれば難しいし、映画だから黒人に勝たせるのか、それとも厳しい現実を観客にも見せるのか、どっちにもとれて裁判ずっと見入っていた。

そして最後の帰結。あの少女はあの年齢にして正義とはどういうものなのかを知ったのだ。裁判など役には立たず、正義は人知れず、2人だけの間で、玄関先のポーチで行われるのだ、と世間を、大人の世界を知ったのだ。あのオテンバだった少女が。誰にもいえなくても、これが正義。

一見、悪人は刺されて死んで、街にはこれ以上の問題を孕んでいないかのようではあるが、あの裁判に関わった陪審員の歪んだ正義がそのままにされている。それからの南部のあり方を示唆しているようでやりきれない。そしてこの映画から何年経った今でも同じ偏見を持っているのだろう。

黒人だから差別される、その差別が正義を歪めて、正義のまかり通らない世界を作ったが故に、裏の正義が生み出される。

何もかもが白日の元に晒されるわけではない。願わくば、裏の正義は、真の正義であって欲しい。これからも。
Shizka

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