菅藤浩三

アラバマ物語の菅藤浩三のネタバレレビュー・内容・結末

アラバマ物語(1962年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

弁護士ドットコムタイムズで「私が好きな法曹界を描いた映画」にランクインしていた名画。主演の弁護士アティカスを演じたグレゴリーペックはアカデミー賞主演男優賞を獲得し、ほかにも脚本賞と美術賞も授賞しました。古タイヤやブランコを使って遊んだり父親が猟銃の達人だったりと、アラバマの風景がほのぼのと描写されている前半、そして、人種差別が激しい南部で黒人トムの白人娘メイエラに対する婦女暴行陪審事件のえん罪弁護を引き受けた法廷劇の後半、がらりと変わります。
 娘スカウトと息子ジェムが父親をパパと呼ばずにアティカスと呼び続けるところが新鮮でした。10歳の娘もアカデミー賞助演女優賞にノミネートされましたこの作品で、もっともほぼ素人を起用したそうです。陪審裁判が遮断措置もなくプライバシー無関係で完全公開されてる感覚に今更オドロキ、1階の傍聴席には白人だらけ、陪審員は全員白人、2階の傍聴席は黒人だらけという描写も時代を感じました。ラストに白人娘の父ボブユーエルがアティカスの子どもたちに暴力を働き、それを正当防衛で防いでくれる近所のブー(精神不穏な人物でいまでは何らかの病名がつくのでしょうが)の登場が唐突な気がしました。ところで登場時間10分もなく台詞ゼロのブーに起用されたのはゴッドファーザーでファミリーの顧問弁護士トムヘイデンをのちに演じる、自らもアカデミー賞主演男優賞をゲットするロバートデュバル、贅沢な起用です。
 原題はものまね鳥を殺すこと、危害のない鳥が声が似ているからといって害鳥に間違えられることはあるべきではない、黒人が偏見ゆえに白人の敵とみなされるべきではない、そういう良心を子供の視点を中心に据えることで炙り出した作品だからこそ、アメリカで長く愛されるのでしょう。
菅藤浩三

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