ニューランド

世界は動くのニューランドのレビュー・感想・評価

世界は動く(1934年製作の映画)
3.9
 知名度が低く、全く知らずに観たが、この作家の、サイレント期の20年代半ばに次ぐ、トーキー期最初のピークであり、栄誉は生涯を通じ最も集まった’30年代半ばから大戦勃発前の数年間を、『肉弾鬼中隊』と共に火を点けた作かもしれない(。2作とも、前後のグループ作の大まかも纏まりあるに対し、ルックもキャラも荒く度を越し、無鉄砲な杭打ちになってる)。厳密ではないが多国の言語をある程度平等に使い、徹底した非戦を打ちだした点で、30年代序盤のパプスト、終盤のルノワール作に比肩し、1825年から110年に亘る、巨大企業一家の盛衰と根っこを描き、コッポラのこの半世紀の壮大作品らを先取りし、その成果も肩を並べてる。スタイルの統一やビジョンの葛藤は、それ程整えられてないが、その試み·力量の張出しは素晴らしく、少なくとも『ゴッドファーザー』に引けを取るものではない。
 4世代·緊密2家族の、結束家族主義の温度を描いていくが、2世代目と4世代目の、片や結ばれず·もう一方は夫婦となった、メインのカップルは同じ俳優がやっていて、血を通しての記憶·再会の歓び、の天啓を与えられ続ける。フォード映画特有の、オツムの足らないしかし全ての導き役の黒人使用人が愛おしく可笑しく、影の散らばり·動き·重なりのバランス、風がマフラーをなびかせ、白い土埃や砲煙が立ち込め、豪雨が打ちつけ、家族の肖像的立ち位置生まれの極まり方連ねと内の一瞬を微かに愛でてくソフトトーン図も、舞踏会の踏まえ·整え拡げの捌き方、家族主義とナショナリズムと金権主義の渦巻きの形象化の歪んでも未来へ歩を進めるダイナミズム、横への進軍らフォロー限りなしの並べ嗜好と·縦への突き進み寄るカメラ移動の力、取り憑かれた男と賢明に足元から目を離さぬ女の原型、とフォード刻印が随所に。セットや戦闘のスケール·美学も、否定と意気を裏打ちして見事。
 1825年、ニューオリンズの館に、世界の綿花産業をリードする、2大ファミリー一体会社結束の改めての宣誓·確認。英独仏に巨大支店を持ち、モットーは、「家族が第一、家族の為に己れ(の利)を犠牲に。家族こそを護れ」で、厳守で破ると解体を誓いあう。「(支店間バラケても)戦争は商人にとっての儲け頭」との本音意見チラホラも、本支店間の婚姻も進み、順調に伸び、4代後、各支社がそれぞれの国の産業界を制す程に。が、第一次大戦勃発。親族が別れて心ならず闘うことにも。儲け巾でかい、武器に手を染める案も。しかし、独仏国境近くの、一方の家の拠点工場、独立して残る女性オーナー社長は、傷病手当品に限るを主張。フランスに来てて、そのまま2代前の果たせなかった眠る記憶から、彼女と結婚したニューオリンズのファミリー中心者はそのままフランス外人部隊に志願。しかし、戦争の悲惨さに、「戦争は勝っても全てを失う。信念も、文明も。武器生産はもってのほか」と妻に完全同調す。
 しかし、戦後の再猛·好景気、綿花ばかりか、全産業の世界的連合体が組上がり始め、それが完成に近づくと、「拝金」へ彼の人格が、人間性をすっかり無くす程に病的に変わり、子供を望む事も消えてくる。
 しかし、急変、大恐慌で、本社と全支社を失う。が、妻のベース工場だけは、支配人の堅実さで残り、そこを起点に、家族作りも併行し、何より心を取り戻し、再出発へ。しかし、また、新たな凶行の時代が巻き起ころうとしてる。独伊のファシズム勃興支配から、世界に不寛容のナショナリズムがはびこり、歪みと諍いのもとへ。
 各国人が母国語と相手国語を、誇りと理解から使い分け、国家·民族の溝を溶かし込む、徹底した非戦主義·思想は、繰り返すが、『炭坑』『大いなる幻影』を繋ぎ拡げる、純度の高く理想を見失わない、浮き上がるも恐れないもので、スタイルが一色に洗練されてない分、コッポラの『ゴッド~』から新作『メガロ~』に至る具体の手応えの厚い、人類史を集約し代表する·壮大な家族史ものが、聳え上がってる。若い分、完成度は低めも、作品の高揚が単独に、且つ広い限りない予感で燃え立ち、恣意なく包みこんでく清新さが、停められない、息遣いと骨格拡げ。日本流に云う独禁法など、眼中にない頃。好戦派?でバランス重んじるフォード自らは大嫌いな作品らしいが、いいじゃないか、自分も気付かない裏の自分が知らず出てるとしたら。その多面への可能性が映画の大作家だ。この破天荒は並ではない。以前は監督の自作を語る等を気にしてたが、今は寧ろ解釈を逆に置いている。非フォード的フォード作品が好きなのかも知れない。
 フォード上映作全制覇に事もなげに、邁進中の知人に、「やはり、フォードが最高?」と聞くと、「いや、ホークスなどに比べると、バラツキがでかい」と否定された。私はその辺よりも、隆盛·転換のポイントが、溝口ばかりとマッチしてると思ってたルノワール作家史が、フォードとも見事に呼応してる事に関心が。
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