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死の砂塵のニューランドのレビュー・感想・評価

死の砂塵(1951年製作の映画)
3.7
 テーマやスタイルをスッキリ絞り込み、伸びやかで心地いい。成功してるかどうかは二の次で、この作家の時に妙に暗くタッチが被り執拗な引力を感じさせるのよりは、表現の方向として、個人的には好ましい。新しく挑戦的テクニックも、この作でも盛り込み、スタンダード化する前のズームが、大胆に大Lからのサスペンスフル拡大に使われ流れる力も生んでいる、短いDIS繋ぎでのアップめ同じ向きの証言する顔並べも、軽い駒落とし動作も可笑しくはなくナチュラルさ保持。ただ、基本的にスッキリ奇手は使わず力強く伸びやか。ロケとセットの切り替え差の気掛りより、そのサイズや効果のバランスや左右奥の(侭や再構成)空間力が、仮に照り付け太陽入れや砂埃の効果なくとも、素晴らしく伸びやかで、縦や(俯瞰図で)横の配列に分割されての内から掴まえ来る構図らも素晴らしく、寄ってくのや横フォローが+αにくねるのも、暗いアクセント付けがなく心地いい、気持ちよくなる。90゜変や対応・切返しもスッキリしてる。
 連邦保安官2代目と、旧来牧場主に迫害される入植者の娘の、(法に忠実過ぎる父に従わず・死に至らしめた悔いと、不公平な法から父を護りたい、の子の側と、それを与え感じとる親の側といった)父子の拘りが、法の遵守と、それが弱者の味方とはならないと無視の生き方が、反目から愛に変わってゆく。牧場主が、牛泥棒と長男殺害者として、老・入植者を私刑ー吊るし首にせんとするのに通りかかった、保安官が裁判の場まで護送すると止める。牧場主らの追跡と銃撃、砂漠の過酷な自然の中、瀕死の旅を続ける、保安官ら三人と護送者とその娘、牧場主の次男を人質とするも、その甘言に副保安官の裏切りも。法を護る事で死者が増える矛盾と、人の内なる真実の垣間見。裁判は、保安官が、不利な状況証拠を覆す、その人間の奥底の本質を微細にを証言するも、私情の入り込んでるを論破された事で有効打にならず、首吊りと結審するも、執行直前、道中の様子と長男の遺品と見えた物から、次男の屈折が気付かれる。著名な俳優陣が各々の期待どおりの味を醸し出す。
 先日の夕刊で、そうだ、ウォルシュ特集をやってんだ、と思い出し、徹夜明けで寝てないが取り敢えず一本駆け付ける。大して知名度や面白さの浸透・信頼はないのに、観客もかなり多い、はやはり新聞の力か。私は直接読んでないが、大して人気等ない筈の前世紀・末の、若いカイエかぶれ以外にはマイナー作家・ルノワール特集があれ程混んだのは、朝日での蓮実さんの紹介記事に依る、と聞いてる。個人的には、その時は、会期途中で勤めてた会社と喧嘩して急に失業状態になったので、半ばから暇を持てあまし、半分くらいは観たが、勤めが続いてたら、蓮実さんにも関心ないし、ルノワール等とても、というか全体の1.2割位しか観なかったろう。
 しかし、30数年振りのウォルシュ大特集。前回の原フィルムに対し、デジタル版だが、今回は字幕が付いてる。本年度実質、最高に濃い特集上映、映画ファンへの最大の贈り物となるかも知れない。30数年の間に、パブリック・ドメインの作も増え、上映リストに上積みされてる。ホークス・フォードには届かないが、ヒッチコックを上回るアヴェレージの作家かも知れない。確かに『めまい』『バルカン超特急』のような映画史上のトップを争うほどの作はないかもしれないが、続く『裏窓』『鳥』『疑惑の影』といった(今、封切作として公開しては勿論)何時なんどきのでも年間トップ間違いない作に肩を並べるは、『復活』『栄光』『彼奴は顔役だ』『夜までドライブ』『大雷雨』『鉄腕ジム』『白熱』等々遥かに目白押しだ。今回30本やるのか、至難の技だが、半数前後は何としても見たいものだ。まさに、映画のアクとコク、そしてキレそのものだ。
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