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太陽はひとりぼっちのodyssのレビュー・感想・評価

太陽はひとりぼっち(1962年製作の映画)
2.5
【「芸術」の限界】

BS録画にて。
アントニオーニが60年代前半に撮ったモノクロ映画。
そのモノクロ映像が鮮烈です。
ただし邦題は、主演のアラン・ドロンのヒット作「太陽がいっぱい」を意識して付けたのでしょうが、「柳の下に」的な感じは免れません。

それはともかく、映像的にはまあ面白い。
最初は室内の男女の(別れる直前の)会話から始まるのですが、外に視点が転じられると、夜ではなく早朝で、しかも周囲は住宅地ではなく、空飛ぶ円盤みたいなものがタワーに乗った、日本ならマリンタワーのような建造物が出てきて、ちょっと観客の意表を突きます。

その後、株の取引所の喧噪など、現代的な映像も出てくる。
アラン・ドロンとモニカ・ヴィッティという美男美女が近づきになるのですが、恋仲になりそうでなかなかならないのが、まどろっこしい。

つまりこの映画、観客の通俗的な期待を裏切るようにできているのですが、見終えてそれで何かが残るかというと、少なくとも作られてから半世紀たった今から見るとあまり残らない。

当時は「芸術」だったのかも知れない。でも今から見ると作る側の過剰な意識だけが先行した、やや退屈な映画としか見えない。最後では新聞記事の「核戦争の危機」なんて見出しも提示されますが、凡庸な印象しか残らない。「芸術」の限界を痛感させてくれる映画、と言ったらいいのでしょうか。

なお、モニカ・ヴィッティは昔、同じ監督の「赤い砂漠」で見てすごい美人だと思いましたが、今回のこの映画ではあまり魅力的には見えなかった。年を取ったからかと首をかしげましたが、「赤い砂漠」のほうが2年あとなんですよね。私の女の趣味が変わったのか。もう一度「赤い砂漠」を鑑賞してみなきゃ。
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