Eyesworth

恋愛小説家のEyesworthのレビュー・感想・評価

恋愛小説家(1997年製作の映画)
4.6
【中年オヤジの実恋愛】

ジェームズ・L・ブルックス監督×ジャック・ニコルソン主演の1997年製作のロマンス映画。この作品で、アカデミー主演男優賞をジャック・ニコルソン、アカデミー主演女優賞をヘレン・ハントがそれぞれ獲得。

〈あらすじ〉
偏屈で神経質で嫌われ者の恋愛小説家メルビン(ジャック・ニコルソン)だが、隣人のサイモンの飼い犬を預かったことから何かが変わり始める。やがて、馴染みの店のウェイトレスであるキャロルへの愛に傾き始める…。

〈所感〉
私が生まれた1997年の映画だが、この時点でジャック・ニコルソンがだいぶおじさんで率直に驚く。『シャイニング』『カッコーの巣の上で』など黄金期の作品に比べて評価は低いのだろうが、個人的には好きな部類。クリント・イーストウッドの『グラン・トリノ』、トム・ハンクスの『幸せなひとりぼっち』等と同系統の偏屈じいさんがある出会いにより少しずつ変わっていくというプロットではあるが、こちらは主人公が老人ではなく中年オヤジという点がちょっと違う。衰えは感じつつ、男としてまだまだ現役だぞ!な一番厄介な歳のおじさん。現実にここまでのヤバいオヤジがいたら、こんな素晴らしいロマンスには仕上がらないだろうが、流石は変人を演じさせたら右に出る者はいないジャック・ニコルソンである。彼の場合、奇想天外、厚顔無恥な行動をとってもどこか不思議な愛嬌があるので、安心してみていられる。ナンセンスかもしれないが、ジャック・ニコルソンの映画を見ていて、こんな非常識で小汚いオヤジが好かれるわけないだろと正直思ってしまう。その辺のリアリティに欠けている。だからこそ夢があるのだろうが。隣人のサイモンはただただ不憫で可哀想。幸せになってほしい。キャロルも中途半端なポジションで中途半端なスタンスでなかなか好きになるのが難しいヒロインだった。メルビンとキャロルはお互い気性が合わなすぎて二人とも若かったら対消滅しそうだが、メルビンが歳を食っていたためになんとか釣り合いが取れていたのかもしれない。傍から見たら、危険でアンバランスな関係である。駄目だと察知しつつも突っ込んでしまう。そんな男女の恋愛の愚かさと素晴らしさを描いていて好感。恋愛小説家のメルビンだからこそ、甘い妄想を抜きにした生身の恋愛への苦悶と喜びがあったのだろう。犬のバーデルにはアカデミー主演ワンちゃん賞をあげるべきだったと思う。作中一番の名演だった。
Eyesworth

Eyesworth