ザビエル

黄昏のザビエルのネタバレレビュー・内容・結末

黄昏(1981年製作の映画)
3.8

このレビューはネタバレを含みます

大きな「転」であるノーマンが湖に投げ出されたシーンも衝撃的だったが、
置き忘れた新聞紙に暖炉の火が移ってしまい火事になりかけるが大事には至らなかったというストーリーの流れ的にはそんなに大きくない出来事でも
登場人物の心が大きく動けば観ている側にとっても大きな印象となることを感じた。
ノーマンの加齢による理想の自分との乖離が元々の意固地な性格をさらに加速させてしまう面や、チェルシーの父親から嫌われていると思う気持ち、その2人ともを愛しているが、最愛はノーマンであるエセルや、歩み寄ろうとするビリー、そして置いていかれるビルの気持ち。
絶妙に登場人物達全てに共感できる物語で
人間のままならなさがとても繊細に描かれていると思った。
共感できる場面や、キャラクターが多いことと、映画に対する満足度は比例するなあと感じた。
「ノーマンが世界で一番優しいことを知っているのは私だけ」とエセルが言った後、
置いていかれてふてているビルをよそにさっさと家に入るエセルと、ビルを気遣ってすぐに家に入らず、「ウソくさ」に対して良い言葉だと残して家に入るノーマンの
2人の対比が、ノーマンの実はとても優しい性格だということをとてもよく表していた。このシーンを観て、もしかしたらエセルよりもノーマンの方が本当は優しいのかもと思ったが。
しかし幼い頃のチェルシーの体験を思うと
ノーマンの性格が丸ごと許されてしまう家庭で育ったチェルシーがあのように思ってしまうのも無理はないなあと思った。
とはいえ私も反抗期の時にひどい癇癪持ちで家族を傷つけまくってしまったことが
とてもノーマンと重なって心が痛かった。
物語はハッピーエンドだったけど、
この後ノーマンがエセルよりも先に旅立つ可能性はとても高く、この物語の先を想像するととても切ない。
そして死は誰にでもやってくる。
悔いのないよう大事な人と過ごすことを伝えてくれるとても素敵な映画だった。
ザビエル

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