浅野公喜

キューポラのある街の浅野公喜のレビュー・感想・評価

キューポラのある街(1962年製作の映画)
3.7
ちゃんと観た事が無かった若い頃のサユリ・ヨシナガ主演映画。キューポラとは鋳物業が栄えていた埼玉県川口市の溶解炉の煙突と知りました。

まず印象的だったのがサユリ・ヨシナガ演じる主人公と弟の自立精神と賢さ。貧困ながらも前者は家事やバイトをしながら友達の家で勉強したり英語の現在形・過去形・過去分詞を暗唱したり格差社会の現実を作文で訴えたり、後者は外来語を結構知ってたり朝鮮人の友達と異国の情勢について話し合ったりします。その一方で大人である親達が結構だらしなく子供達は彼らから理不尽に殴られたり「女らしく」という言葉を浴びせられたりと、今以上に「ちゃんとした女性や子供」が生き辛い時代という事を実感しました。今の朝ドラ的というか、理想的過ぎる展開かもしれませんが、逞しく生きる彼らにはシンプルながら胸を打たれます。また、朝鮮の人々の帰還には複雑な想いを抱きましたし、ラジオの工場見学では高度経済成長期の片鱗を垣間見た気分でした。

サユリ・ヨシナガは思った以上に滑舌・声の通りが良く、聴きとり辛い役者の人々が多い中で際立ってましたし、表情も割と繊細とちゃんと訓練している印象で思った以上に良い演技を見せてくれます。そして「金田一」シリーズの「よし、わかった!」でお馴染みのタケシ・カトウがやたら若く、サユリ3のクラスの教師を演じており意外と整った顔立ちなのも印象的でした。
浅野公喜

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