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369のメトシエラ -奇跡の扉-のkaomatsuのレビュー・感想・評価

369のメトシエラ -奇跡の扉-(2009年製作の映画)
1.5
「ぴあ」満足度No.1など、口コミで非常に評価の高かった作品。“孤独な現代人の心の再生”をテーマに据え、主人公の若者と、彼を伴侶とするために400年待ち続けた老婆との出会いと絆を軸としたドラマ。ミステリーと寓話性に富んだアイデアは卓抜だが、児童虐待死や身元不明の独居高齢者などの社会問題を、三面記事から手早くコピー&ペーストしたような描き方には、正直あまり観るべきものはなかった。結果、ファンタジーとリアリズム、どちらの描写も中途半端かつ説明的・感傷的になってしまい、さらに映像そのものの説得力が弱いため、私の心の琴線にはまるで響かず。それぞれの社会問題を俯瞰で捉え、「都会の病巣」を炙り出そうという狙いは分からなくもないが、テレビの2時間ドラマにありがちな演出なのに加え、一つひとつの社会問題への掘り下げがあまりにも浅すぎる。さらに、それらの薄っぺらいスクリプトを補うかのごとく、「さあ、ここから泣いてください」と言わんばかりの、やたら情緒過剰な演技と音楽には辟易するばかり。そんな表面的な取り繕いをしたところで、当然ながら、本質的なものなど何も見えてこない。しかしながら、長編デビューにして「現代の寓話」という難しいテーマに挑んだ小林克人・健二監督兄弟の健闘に、次回への期待を込めて、心から拍手を送りたい。
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