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シービーストのkaomatsuのレビュー・感想・評価

シービースト(1966年製作の映画)
2.5
「これはホラーなのか? それともコメディなのか?」「ツッコミどころ満載」というジャケ裏の解説と、妙におどろおどろしいジャケのイラストに吸い寄せられるように、まったく知らない本作のDVDを購入してしまった。

舞台はルーマニアのトランシルバニアにある農村。ヴァン・ヘルシングの末裔だという伯爵が、共産主義の圧政を逃れて、ひっそりと洞窟に暮らしている。ちょうど200年前、この地で魔女を捕らえ、湖に埋めて処刑した忌まわしい歴史に思いを馳せ、魔女の呪いが長い封印から解かれるのを恐れている。一方、イギリスから車で新婚旅行に来たフィリップとヴェロニカは、ある日車のハンドルが利かなくなり、対向車とすれ違いざま、湖に車ごと転落。その湖こそが、200年前に魔女が沈められた場所。湖で行方不明となったヴェロニカは、魔女に姿を変えて出現し、村の人々を次々と殺し始める。フィリップと伯爵は協力して魔女を捕らえ、魔女に憑依されたヴェロニカを取り戻そうと、悪魔祓いに奮闘するのだが…。

魔女が伯爵に捕らえられ、麻酔注射でいとも簡単にコロッと眠ってしまった挙げ句、家宅捜索で警察に取り押さえられ、さらにそれを伯爵が取り返したりと、グロテスクなルックスの割に、眠ったままたらい回しにされ、意外と活躍の場が少なかった魔女がお気の毒で笑ってしまった。全体としては、期待したB級・C級ならではのグロさやチープなつくり、奇抜でシュールな展開などは無くはないものの、それらが面白さに繋がるような要素はほとんど感じられず、78分という短い上映時間の間、何度も寝てしまった。全体的に、セリフ過多の一本調子とせっかちな編集のせいで、メリハリや緩急がなく、迫り来る恐怖感を味わえかったのが残念。ただ、個人的な発見といえば、フェリーニの「8 1/2」で、妄想ハーレムのシーンでマストロヤンニを囲む女性の一人として出演していた、B級ホラークイーンのバーバラ・スティールがヴェロニカ役だったことと、「リトル・ショップ・オブ・ホラーズ」で主人公が働くフラワーショップの店長役だったメル・ウェルズが、本作では覗き見が趣味のホテル支配人を演じていたこと。決してB級ホラーマニアではない私でも、彼らの存在感が、より「らしさ」を彩っているのがよく分かる。
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