安堵霊タラコフスキー

少年の安堵霊タラコフスキーのレビュー・感想・評価

少年(1969年製作の映画)
4.3
大島渚が亡くなってもう5年とか相変わらず時の進む速度早くなったなとしみじみ思いつつ、Netflixでこの映画を鑑賞。

当たり屋の家族っていうあまり良い気持ちのしない題材だけど、屡ドキュメンタリータッチになる演出や風景を主に捉えた撮影等は中々好みの部類だったからそういう点で楽しめたし、中でも主人公の少年が船上で弟をあやすシーンはほっこりして味わい深かった。

しかも時折小津やサタジット・レイに引けを取らない程侘しさが感じられるシーンが見受けられたのも白眉で、中盤夜の海辺で主人公が自宅に帰る真似をするシーンは彼の不幸な境遇も汲み取れて特に印象深いものだった。

勿論終盤の雪原のシーンも素晴らしく、子供らは寒さでしんどかったろうなとは思うけれども、その甲斐もあって情緒溢れるシーンになっていたように思う。

しかしこの映画は固定カメラの長回しが目立つ作りにもなっているけど、そうして撮られた場面はどれも構図が良い意味で絵画のように整っていて明媚で、大島渚は変わった映画ばかり撮っていてもこういう画面への拘りがしっかりしていたから世界的にも評価されたのかなと改めて見直した。

アミール・ナデリがCUTで自選の100本に入れていたけど、その理由もなんとなくわかる気がする。