田山信行

仮面ライダー THE FIRSTの田山信行のレビュー・感想・評価

仮面ライダー THE FIRST(2005年製作の映画)
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仮面ライダーで冬ソナをやるという謎すぎるコンセプトが悉く全てを台無しにしている。大人向けを意識した時に恋愛劇と難病って安直すぎやしないか?子ども騙しならぬ大人騙し。

恋愛脳ゆえに使い物にならず裏切り者認定される一文字隼人。ヒロインあすかの殺された婚約者に瓜二つであることに何の理由もないのが酷い。その顔に整形して近づく計画とかそういう訳でもない。新聞記者である一文字が殺されて敵の改造人間として復活させられるってので良かったのでは。そもそもショッカーの洗脳技術に欠陥がありすぎる。ふとしたことで簡単に解けるし。

メインの冬ソナもどきよりはまだドラマとして興味が持てるウエンツ君のパート。難病に苦しみ自暴自棄になるって設定にはデカ過ぎるが。せめて14〜5歳。なかなかウエンツ君が味のある良い芝居をするのでここのパートはけっこう好き。冬ソナもどきのメインと並行してこのエピソードが描かれる意図が最初の方はさっぱり理解できないから困惑する要因でもあるけど。

売りのアクションも生身のボディアクションに拘るのは良くても頑なにCGなどエフェクトまで廃したのは当時のTVシリーズとの差別化と初期の体当たりの殺陣を模したのだろうが結局は野暮ったくなってるだけでイマイチ。横山誠さんの牙狼での仕事から期待して観ると尚更。だからシン・仮面ライダーでCGへ振り切った思い切りの方が買える。TVでは難しくなっていたバイクアクションが楽しめるぐらいだろうか。あと編集で誤魔化してるだけにしか思えない変身シーンの描写にもガッカリ。

終盤のアクションでダブルライダーになるが他勢に無勢で逃亡した一文字がちょっと思い直して戻ってきただけで急に状況が好転するのが全くもって理解できん。雑過ぎる。その後ラスボスも出てこなくて消化不良。

結局この作品で一番テンションが上がったのは見事に現代的にリファインされたライダーのデザインを見たときだけで大いに抱いた期待に本編が応えてくれることはなかった。

この作品で本郷猛を演じた黄川田将也さんは石ノ森先生の描く漫画版のタッチの本郷に近く佇まいが素晴らしかった。この当時に注目していた役者さんだったので起用されたことには歓喜だった。一応なりともライダーを演じたことは功績だしこれ以降も特撮界隈でも活躍して愛される人ではあるので今に至ることではそれが救いか。
田山信行

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