ちろる

プーサンのちろるのレビュー・感想・評価

プーサン(1953年製作の映画)
3.6
原作は昭和25年に毎日新聞で始まった社会風刺4コマ漫画。
その後朝日新聞→週刊新潮と掲載場所を変更しながらもなんと平成元年まで掲載されていたというからすごい。
今生きる私たちの世代からしたらプーサンって言ったらもうあの黄色いクマしか思い浮かばないけど、こちらの漫画の主人公はしがないおっさん、しかもこのタイトルもただ音が面白いから付けたという適当なものだったらしい。

ちなみに市川崑監督が映像化したこちらの作品にはプーサンという人物すら出てこない。
伊藤雄之助演じる妻に先立たれた中年教師が、恋も仕事も上手くいかずになにかと不幸に見舞われていく負の連鎖が切なくもユーモアたっぷりに描かれている。
オムニバスではないのだけど、色んな登場人物に焦点を当てて、観ていてけっこう楽しい。
悲劇と喜劇は隣り合わせだとは何かのレビューでも書いた気がするのだけど、こちらもまず観終わったら後にそんな風に思った作品。
シニカルなユニークさで大人向けのシュールな笑い?が今の時代観ても古臭くなくて、何よりも驚いたのは、淡路吹雪さん演じるカン子の台詞回しがこの時代の他の映画作品とはちょっと違っていて現代の女子とさほど変わらない印象を受けたこと。
そして何よりも、結婚よりも仕事!と男の人よりもがんばって働こうとする負けん気の強さもとても当時としては革新的な女性像で面白い。
総合的に言えばこのカン子、まじめんどくさいし可愛くないし、好きにはなれなかったけど。
最近家族にも敬語使うような小津安二郎作品の女性像ばかりなれていたせいでこのカン子を観て妙に安心をしました。

ちなみに若き八千草薫さんの可憐な姿がこのシュールな作品にとっては唯一のオアシスでした。
ちろる

ちろる