たく

パームビーチ・ストーリーのたくのレビュー・感想・評価

パームビーチ・ストーリー(1942年製作の映画)
3.8
面白かった!離婚の危機が訪れた夫婦のドタバタ騒動記で、プレストン・スタージェス監督らしい軽妙な作りに自然と引き込まれた。邦題の「結婚五年目」より原題の方が世間に定着してるという珍しいパターン。

冒頭の慌ただしい結婚式から5年経ち、夫のトムの航空事業の立ち上げに目途が立たないのを妻らしい役目を果たせてない自分のせいと思い込み、唐突に離婚を申し出るジェリー。ここからトムの必死の引き留めにも関わらずさっさと家を出てパームビーチに向かうジェリーの奇妙な旅路となり、ここに「男に縛られない女性の自立」という一つの定型を見るようでいて、実は彼女が自覚的かどうかは別として色気を武器として世の中をうまく渡るという女のずるさを見せるんだよね。

無一文のジェリーが、女性的な魅力のおかげで難聴の爺さんから小遣いをもらい、イカれた金持ちグループに拾われ、大富豪の青年に助けられたりするのが、当時は色気がなければ女性が生き抜けない時代だったのかなとも思う。でもクローデット・コルベールは「或る夜の出来事」でも色気でヒッチハイクを成功させて勝気なクラーク・ゲーブルをやり込めるシーンがあったし、彼女自身がそういうキャラで売ってたのかな。

ジェリーを諦めきれないトムがパームビーチまで追ってきてから大富豪の姉弟との偽りの四角関係になっていくのが抜群に面白い。ラストのいくらなんでもそれはないだろうっていう呆れるようなご都合主義的なオチに笑うしかなくて、ハッピーエンドの後に冒頭と同じ疑問符が戻ってくる円環構造が見事だった。
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