708

別離の708のネタバレレビュー・内容・結末

別離(2011年製作の映画)
5.0

このレビューはネタバレを含みます

「白い牛のバラッド」からイラン繋がりで、この作品を観ることに。

この作品の存在は前から知っていました。でも、ヴィジュアルとタイトル、簡単なあらすじから、てっきり夫婦の離婚でゴチャゴチャするだけの話かと思って完全にスルーしてましたが、「アスガー・ファルハディ監督にハズレなし」と言ってる人がいたので背中を押されて観ました。

いやぁ、これは面白かったです。いつか何かが起きそうという空気を漂わせつつ物語が進行して、予想していた展開とはまったく違ってました。見応えのあるサスペンス。見逃して損してました。監督の他の作品も観てみます。

「白い牛のバラッド」と同じように、イランの法律や風習、イスラム教の戒律によって厳しく制限された部分も多く、そこがこの物語の歯車を狂わせる原因になっていたりもします。女性が介護で男性の下の世話をすることすらNGという大変さを初めて知りました。女性が制圧されて生きづらい社会。

凝ったギミックや捻ったどんでん返しはないものの、人と人とのすれ違いによって、ちょっとずつ歯車が狂いながらサスペンスっぽく展開していきます。アルツハイマーの父の介護をする息子ナデル、その娘のテルメー、ナデルの家で家政婦として働くラジエー、みんながちょっとずつ嘘をついていて、その嘘も決して人を困らせるための嘘ではなく、大事なものを守るための嘘だったりします。

「コーランに手を置いて誓って欲しい」

ラジエーがナデルに言った言葉を、後にそのまんまナデルがラジエーに言ったときには、思わず「おぉ!」と声が出てしまいました。そうきましたか、と。ラジエーはさすがに神に嘘がつけずに追い詰められながら事態は収束したものの、後味悪く胸糞悪さが残りました。ラジエーが嘘をついていたのはよくないにせよ流産した元々のきっかけは、ナデルの父親が外でふらついていたのを助けるための責任感や善意からで、それをナデルが知らずにラジエーを責めているということがなんとも理不尽で、後味の悪さを助長している感じがしました。

ナデルと妻のシミンがやっと離婚することになり、裁判所でテルメーにお父さんお母さんのどちらにつくかを問われつつ、ナデルとシミンが部屋の外で待っている長回しのエンドロールが凄くいい。結局、どちらにつくかの結論が描かれていないままですが、完全に観る側の想像に委ねて余韻を残す感じが好きでした。
708

708