オトマイム

別離のオトマイムのレビュー・感想・評価

別離(2011年製作の映画)
4.3
濃密な、骨太の作品だった。素晴らしかった。

言い争い、押し問答、裁判所での尋問。作品のほとんどがそんなもので構成されている。音楽もない。誰が悪いのか、どこに責任があるのか、真実は何なのか。和解が見えないまま、鬱屈としたまま話が進むけれど、どんどん引き込まれていく。きっと巧みな脚本と演出のせいなのでしょう。

最近、イランをはじめ中東の映画を観る機会が増えた。『人生タクシー』等のパナヒ監督は同じイランであっても反骨心を前面に押し出す。一方ファルハディ監督は宗教を拠り所として暮らす人々のふつうの生活を描き、その作品にはイスラム教の教えが色濃く反映されているように思う。

驚きポイント
①女性が男性を介護する時の戸惑い。「これをすることは教義に反しますか?」と電話で確認していたり、その仕事を夫にも言えなかったり。
②神という言葉が日常的に頻繁に使われる。「コーランに手を置いて誓う」ことの重さ。

映画って、未知の世界に触れることができるのも素晴らしい。淀川長治さんが仰ってましたね、「映画観ないとバカになりますよ」って。