Kz氏

TATSUMI マンガに革命を起こした男のKz氏のレビュー・感想・評価

3.5
2017年に閉館してしまった、みなとみらいのショートフィルム専門映画館ブリリアショートショートシアターで予告編を見た記憶がある。2014年全国順次公開だから、6~7年も昔。見たいと思いながら見る術のなかった作品に、土曜日の朝から巡り会えたのは幸せ。サブスクはすばらしい。

劇画を生み出した故辰巳ヨシヒロの自伝と短編をない交ぜた作品で、敗戦から高度成長期までの戦後日本史。確か本作公開中か直後に亡くなったのではなかったか。漫画は子どものものというのは昔語りだから、劇画はもはや死語。劇画工房の作家たちが切り開いた文化の広がりである。
彩色したペン画が動いているという程度のアニメが劇画的で、古いフィルムのように画面を傷つけたり汚したりの演出が時代を鮮烈にアピールする。自伝「劇画漂流」に織り交ぜられた短編作品は、すべて戦争と人間疎外を背負っており、その異化効果に驚く。広島原爆をミステリから描いたり、猿に象徴的意味が込められたり。

本作がシンガポール映画であるのは、コミック・アニメという表現の持つグローバル性の証左か、それとも、日本人の文化的盲目性の故か。
Kz氏

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