TATSUMI マンガに革命を起こした男の作品情報・感想・評価

「TATSUMI マンガに革命を起こした男」に投稿された感想・評価

よー

よーの感想・評価

4.0
2014年12月3日, 1時26分
「TATSUMI」を観てきた。
“劇画”という言葉の名付け親である漫画家、辰巳ヨシヒロ先生の自伝的漫画の映画化である。
漫画のアニメ化、映画化は今時珍しいものではない。
しかしこの作品、アニメーション映画 と言うにはいい意味で逸脱が過ぎる、“動く漫画映画”なのである。
もはや新ジャンルのように思えた。

きれいじゃないものの輪郭線をとらえていくことで劇画は出来上がる。
きれいなものよりもそうじゃないものの方が多い世の中だ、なんだか背後をとられたような、そうしたリアリティがそこにはある。
未来ある子供には少々残酷だが、特に作中に挿し込まれている「グッドバイ」や「男一発」には、グッとくるものがあった。
絆や繋がりを意味する性が、反面裏切りや決別の大きなキーともなりうること。
性への執着は、単に快楽から来るものだけではないということを、パンパンや初老の人から学んだ。



スクリーンはおじいさんとわたしとで二人占めだった。
辰巳ヨシヒロは75歳、見た感じおじいさんも同世代だろう。
貧困の少年時代や戦争の描写含め、わたしには多くが真新しく映ったが、このおじいさんにはどんなふうに見えていたんだろう。
なんてこともちょっと気になった。
のん

のんの感想・評価

3.0

ドラマ性のある大人の読み物としての“劇画”誕生に寄与した漫画家の半生を、本人の短編と絡めながら綴っている。

作品を読んだことなかったので、短編は衝撃的でした。なんとも力強く生々しい。
戦後昭和史としても見ごたえあり。
恥ずかしながら劇画を生み出した歴史的な漫画家でありながら辰巳ヨシヒロの名前を知らなかった。昭和10年に生まれて戦争に復興、高度経済成長と共に駆けていく辰巳の漫画家人生を5本の作品を挟みながら物語っていく。原爆投下時に影が焼きついた親子の写真を撮った男に突きつけられた真実。四畳半に猿と暮らす孤独な工員の悲劇。定年後の妻との生き地獄に心の折り合いをつけるべく浮気を試みる男。子供向け漫画で行き詰まっていた所に便所の卑猥な落書きでインスピレーションを得た漫画家。占領軍の情婦とそのだらしない父親。どれもこれもが大体鬱屈して酷い結末だが単純化できない複雑な人間心理が込められている。今でも本流とは言えない漫画を率先して発表して表現の幅を広げた先駆者ぶりを同時代の有名漫画家、例えば一緒に仕事をしたさいとうたかをのインタビューを用いるようなことは一切せずに5本の作品で如実に語っている。本作をジャンル分けするならドキュメンタリー。こういう手法もあるのかと思った。この世界は奥が深い。
Masataka

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4.1
辰巳ヨシヒロという漫画家を、僕は名前しか知らなかった。この人がいなければそもそも「劇画」という言葉すらなかったという先駆者であるというのに。本屋などにあまり置いてないし、Amazonで検索してみても、作品は驚くほど少ない。逆に同時代の漫画家で交流もあった、つげ義春の作品はたくさん出版されている。

戦後間もない頃、しかも10代から漫画家として活躍していた辰巳ヨシヒロの半生を、合間に何本かの代表的な短編作品を挟みながら描いていくという構成の映画。劇画を動きの少ないアニメーションにしている。ちなみに収録作の中では「男一発」が好きだった。

エンドクレジットを見るまでシンガポール制作だとは知らなかったので驚いた。日本でも知らない人が多い偉大な漫画家を、このような映像作品にしてくれてとてもありがたい。辰巳ヨシヒロさんは残念ながら本作の公開から数年後に他界されてしまったが、本作ではナレーションも担当しており、元気に絵を描く姿を見ることができる。
sou

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4.1
構成も上手いし辰巳ヨシヒロへの畏敬に溢れた映画だと思います。
辰巳先生のタッチで、持ち味である淡々としつつ陰鬱な雰囲気を上手く描いているのはすごいと思いました。
辰巳先生ご本人のナレーションも良いですね。この映画の5年後に亡くなられましたが声が若く感じました。
別所哲也さんの声もやはり素晴らしいです。
辰巳ヨシヒロを知らない人にも観て欲しい作品です。
saki

sakiの感想・評価

3.6
重く暗く湿った、激動の時代昭和の泥臭い劇画ショートストーリーと、
辰巳ヨシヒロ氏の自叙伝ストーリーが、前置きなく交互に挟み込まれる変わった作り。
それが戦後日本の群像劇として不思議と一つの時代そのものの力強いうねりを浮かび上がらせ、胸ぐらを掴まれたような目の離せない映画でした。
KUBO

KUBOの感想・評価

5.0
【2014 アーカイブ】

また今日も素晴らしい映画と出会えました。「TATSUMI マンガに革命を起こした男」。宣伝文句に「日本だけ知らない」とありますが、確かに漫画ファンを自認している私も「辰巳ヨシヒロ」を知りませんでした。

彼が描くのは戦後から高度成長期を迎える50〜60年代の日本に生きる人たちの心の闇。原爆、職工、定年退職、パンパン。どれも暗く重いが心に突き刺さる。

あえて「劇画」の荒いペンタッチを活かしたハイセンスなアニメーション。一人六役をこなした声優としての別所哲也も素晴らしい。

エリック・クー監督は東京国際映画祭の国際審査員も勤められており、先日お会いした監督さん。これを見てからお会いしてたら話したいことやお聞きしたいことがいっぱいありました!

まずは「辰巳ヨシヒロ」を知ることができたことに感謝。そしてこれほどまでにハイセンスなアニメーション作品に出会えたことにも感謝。日々、良い作品に出会えてうれしいな〜*\(^o^)/*
玉露

玉露の感想・評価

3.0
影の形がみんなが見ているほうではなく
初めから、あっちの方に見えてしまった。
ぽ

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4.3
辰巳先生の劇画を映画化した短編集のようなもの
大人向けである えげつない 苦しい
しかし引き込まれる 面白い…
親孝行の親子の話が好き
nero

neroの感想・評価

4.0
日本公開が決まってから半年以上経った2015年3月、ようやく札幌で公開された。 その1週間前に辰巳ヨシヒロは死去、追悼上映となってしまった。
大好きな作家という訳ではないが、折に触れ読んできた彼の作品群は、良くも悪くも印象に残る。その身も蓋もない描写から否応無しに喚起される同類嫌悪なのかもしれない。

学生の頃、神田のヒロ書房へ単行本を買うため伺ったことがある(目的は辰巳氏の本ではなかったが)。小さな部屋には一人の男性が椅子に座っていた。あれはご本人だったのだろうか? 暑かったと思う。窓を背にしていた為か、逆光の中のシルエットだけを覚えている。

映画はほとんど『劇画漂流』のスクリーン再構成という趣で 、既視感強いのは書籍読者には仕方がない。静止画=動画の変換にちょっと無理矢理感もあったが、ドキュメンタリー部分の作り方も丁寧だし、挿入される短篇にもスムーズに入っていける。

エピローグで辰巳氏が実写で登場。はにかんだような笑顔が好感だ 。猿と手を取って去って行くエンディングにはジーンとした。監督の辰巳愛・劇画愛を感じる映画だった。しかしこういう映画がなぜ日本で出来ないのかねえ。
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