くりふ

ロビンとマリアンのくりふのレビュー・感想・評価

ロビンとマリアン(1976年製作の映画)
3.5
【ロビンはつらいよ】

中年クライシスと闘う、ふうふう言ってるお疲れションコネロビン。ヘプバーンの復帰作でもあるんですね。妖精力かなり枯れちゃってますが。剣戟の爽快感は殆どありませんね。剣を持っても、ふうふうしてます(笑)。

が、サタデーナイトライブ出身、R・レスター監督のオトボケ外し演出と、ロビン・フッドなのに情けない、という膝カックン感が妙にマッチして、愛すべき佳作になっている、と私は思います。…対象年齢高そうだけど。

時期的には、長いベトナム戦争がようやく終わった頃の制作ですね。十字軍遠征でリチャード王に同行、というのはロビン話の定番らしいですが、遠征をようやく終えたウンザリ感に、世相のボヤキが反映された気がします。これがまた、ロビン伝説の晩期、黄昏物語に相応しい感じもするのです。

「人生40年と言うが、40年過ぎてこのザマだ」遠征の帰り道でいきなり、こんなボヤキで始まるロビン・フッドってば(笑)。

でも、さすがションコネですね。体力衰えても、目が死んでません。そして、オスの部分は全く萎えない、としか思えぬ濃厚さがずっと漂います。

狂気いっぱいリチャード王はリチャードが好演。破滅型似合うハリスさん。元気いっぱい破滅目指すもんだから、もう破滅関連お腹いっぱい…という辺りで一旦、残った妖精力ふり絞り、ヘプバーンさん登場ですね。

病人に「楽になるわ」とやさしく、薬を飲ませる癒しの聖母…と思わせて、この初台詞がヘビーな伏線にもなるのだから、やっぱり女性はコワイです。

ヘプバーンの髪型、ヘンじゃないすか? とっても70年代な気がします。当時ああいう頭、作れたのでしょうか? そもそも尼僧ってあれアリなの?俗世に思いっきり未練ありそう。…実際そうなりますが(笑)。

しかし彼女、枯れても可憐ですねえ。情念あまり醸してくれませんが…。この情念の薄さが後に、彼女の最終決断を、曖昧に包んじゃったと思います。

枯れたロビンとマリアンは、水に落ちる辺りから、やはり生き返りますね。でもラブシーンは…レスターさん巧くないなあ。台詞はいいのに勿体ない。だから字幕と、元の台詞との違いも気になったのですけれど。

凍った愛が再び燃え盛る時…20年分抱いて。か? 泣くまで抱いて。か?女性はどちらでキメたいのでしょう? 私なら後者にして欲しいです。前者だとノルマみたいで。20年分って何回分? とか考えちゃった(←コラ!)。

全体で、ロビン伝説の面白さより、映画史の中で伝説を作った二人による、伝説が閉じてゆく物語、としてのみ応えが大きかったです。笑いも挟みつつ。

で、本作の評価が大きく分かれるのは、マリアンの最終決断をどう見るか?というところでしょうかね。美談にみせようとはしてますが、彼女の行為って、サロメか阿部定か? みたいな域に、踏み込んでると思う。

オスの本能で突き進んで止まらないロビンを、自分のものにするには、もう「去勢」するしかない…と思い込んじゃったんでしょうかねえ…。

そうするからには自分も…という気持ちも、痛く、わからなくもないですが、やっぱりヘプバーンさんの情念不足で、ちょっと唐突な感じがしました。

但しこの結末、ロビン伝説最古の文献「ロビン・フッドの武勲」での結末を、謀略から愛憎へと変えたものなんですね。やっぱり伝説で閉じようとしてる。両者の違いを考えると面白そうなんですが、余裕ないので止めときます(笑)。

冒頭と結末で映画をサンドイッチする、象徴的な「林檎の半生」をみていて、マグリットの絵画を嫌でも連想し、元ネタあるんじゃないかと気にしてます。どなたか知っていたら、教えてください。

あ、バカ殿ジョン王イアン・ホルムさんと、悪代官ロバート・ショーさんも、それぞれいい味出してました。

全般に、役者の配置が巧く嵌ったと思います。ジョン王にくっつくロリータ王妃は、2010年版ロビンよりこっちの方が、サービスもよろしくて、つい、ふらふら見惚れてしまいました(笑)。

<2011.2.13記>
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