hjktkuj

仇討のhjktkujのレビュー・感想・評価

仇討(1964年製作の映画)
5.0
映画というものは脚本、監督、撮影、音楽、出演者が揃うと傑作が生まれる。脚本橋本忍は、羅生門(1950)を皮切りに、平手造酒(1951)、加賀騒動(1953)、七人の侍(1954)、蜘蛛巣城(1957)、切腹(1961)、仇討(1964)という不朽の名作時代劇をものにした。娯楽が次第にTVに奪われつつあった時代に東映は時代劇不振のなかいわゆる「集団抗争時代劇」に移行し当時は不入りだったものの十三人の刺客(1963)という傑作をものにしていた。そういった時代に、まだ31歳の中村錦之助は武士道残酷物語(1963)、 関の弥太っぺ(1963) 、仇討(1964)という時代劇の傑作をものにしている。中村錦之助は、仇討(1964)までの10年間で117本の作品に出演しているが、今井正監督と組んで武士道残酷物語(1963)、仇討(1964)という異色作品をものにした。とりわけ橋本忍の脚本を得た仇討(1964)は不朽の名作となった。音楽が武満徹と黛敏郎の違いでやや雰囲気が違ってはいるものの、切腹(1961)同様武士階級の不条理がテーマであり、回想によるストーリー展開、丹波哲郎・三島雅夫共演、モノクローム作品等、橋本忍脚本のこの2作品はタッチが似通っておりどちらも甲乙つけがたい傑作と言ってよい。中村錦之助演じる江崎新八は当時の武家社会では入婿で他家を継ぐ以外には一生肩身の狭い部屋住みで終わるしかない境遇で毎日悶々としていたのであろう、魔が差したのか自身もまた武家の面子を盾に槍の穂先の曇りくらいのことで神山繁演じる奏者番奥野孫太夫と口論となり後日尋常の果し合いの末殺してしまう。これが私闘禁止の触れを破ったかどで非難されることとなり、江崎家、奥野家、目付、国家老それぞれがそれぞれの武家の面子を守った結果、尋常ではない晒し物の仇討ちショーに引き込まれていく。ことの顛末を見終えた田村高廣演じる兄江崎重兵衛が、弟江崎新八への申し訳なさと武家社会の面子の不条理に嫌気がさしたせいか切腹して果てる。武家社会の不条理をいやというほど味わったのは中村錦之助ではなく実は田村高廣のほうだったのだ。103分があっという間の不朽の名作時代劇である。受賞歴が京都市民映画祭助演男優賞(田村高廣)だけというのは作品の評価が低すぎる。東映時代劇にも大映時代劇にも名作があるのに評価されていない作品が多いのは誠に残念至極であるがこの作品もその一本である。
hjktkuj

hjktkuj