Kuuta

ブルーバレンタインのKuutaのレビュー・感想・評価

ブルーバレンタイン(2010年製作の映画)
3.8
説明台詞でなく、細かな所作や設定で2人の性格や人生観の違いを表現している(冒頭だけでも食事や身支度の仕方、寝てる場所の違いから色々分かるし、犬が見つからない時点で先の展開が暗示されている…)。上昇志向で、冷め切った両親の関係にウンザリしているシンディ(ミシェル・ウィリアムズ)と、学はないが家族が一緒にいる大切さを見に染みて覚えているディーン(ライアン・ゴズリング)。

35mmと16mmカメラの使い分けも交えつつ、殴り殴られるシーンなど、過去と現在が微妙に重なり合いながら離れていく。脚本が素晴らしい。手直しを何度も繰り返し、結局映画化まで10年以上かかったとか。

手持ちカメラから溢れる若々しさ、冷め切った固定カメラ。青く染まったラブホテル。エンドクレジット…。貧困とか暴力とか、そういうドラマチックな事情ではなく、どこにでも生じうる亀裂の積み重ねがきっかけなのが胸にくる。「俺の子供を作ろう」が切ない。何を言っても一度嫌悪感を持たれると離れていく。本当は良い人のはずなのに、一緒に居たくない。

ラストショットの1つ手前の場面痺れた。シンディの父親がシンディに近寄ろうとするも、彼女は気付かないまま娘の方へ歩み寄り、右にフレームアウトする。離婚にはシンディ親子の不仲も影響しているわけで、2世代に渡って親子が引き裂かれる様を構図一発で示している。

終盤夫婦が抱きあう場面での時制の切り替えがあまりにエグく(褒め言葉)、笑いすら込み上げて来た。75点。
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