Sari

アメリカの影のSariのネタバレレビュー・内容・結末

アメリカの影(1959年製作の映画)
3.8

このレビューはネタバレを含みます

アメリカン・インディーズの父として知られるジョン・カサヴェテスの長編処女作『アメリカの影』(1959年)。
インディペンデント(自主制作)映画として成功した最初期の映画と言われるセミ・ドキュメンタリー。

マンハッタンに住む白人と黒人のハーフの3兄妹の物語。ヒュー(ヒュー・ハード)は歌手から没落してストリップショーの司会者となり、ベン(ベン・カルーゼス)はトランペット奏者としてうまくいかず不良仲間に加わり、外見は殆ど白人のレリア(レリア・ゴルドーニ)はハーフであることがわかって白人の恋人に捨てられる…。
といった肌の色の違いによって生まれる疎外を体験していく様を描く。

ジョン・カサヴェテスは1954年に映画俳優としてデビューし、俳優として注目を集めた頃に、知人と演劇のワークショップを開設。そこでの即興演技の実験的延長として本作を初監督した。
全編オールロケで台本を用意せず、現場で即興的な演出を施しながらの撮影が功を成している。
その16ミリフィルム撮影によって映し出されるモノクロのニューヨークの街、C・ミンガスの音楽やジャズミュージックが彩るスタイリッシュなムードは、初期のジャームッシュや、素人を起用した演劇的アプローチは濱口竜介にも多大な影響を与えているのだろう。
人種差別の壁など、それぞれの問題にぶちあたりながらも、日常を生き抜いていく兄妹の青春像を通して邦題そのままの問題意識を描き出しつつ、その中から時代と青春の息吹を露にしていく秀作。

2022/08/19 DVD
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