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火垂るの墓の4423のレビュー・感想・評価

火垂るの墓(1988年製作の映画)
5.0
6月頃に道端で蛍を見かけるようになると、そして夏になると思い出す作品。

子供の頃はビデオに録画したものを何度も何度もテープが擦りきれるまで繰り返し観ていたが、成人してから観るのは本当に久しぶりである(※金ロー映らない県民です)。

改めて観てみると死んだ清太と節子が自らの記憶を繰り返し見つめている赤いシーンが相当つらい。子供の頃はこの赤いシーンがどんなものか分からないまま観ていたと思うが、まるで戦火に包まれた煉獄のようではないか……。

しかし、自分も節子と同じく妹という立場だからか、清太は今も昔も大好きなお兄ちゃんキャラである。

兄にはなれるが、父や母の代わりにはなれない(確か野坂さんもこんなことを言っていた気がする)。これが全て。様々な選択があるなかで、兄として唯一選べたのがあの道だったのだと。

死んでもなお、自分たちが死ぬまでの時間を現代に至るまで何度も何度も繰り返すことしか出来ない二人が切ない。節子はドロップを無限ループ的に食べられるから幸せなのかなと思ったりもするけれど。どこを切り取ってもリアリズムに溢れる分、悲しみも深い。

「もう遅いからおやすみ」の後、清太と私たちの目線が合うその一瞬。そして現代の町並みを見下ろすラストカットは悲しいとかそういうレベルを越えている。この一瞬に込められた凄まじいまでの"なにもなさ"がこの作品にまた凄まじい虚無感をもたらす。間宮芳生による犯罪的に美しい音楽にのせて……。

一生忘れられない作品だし、忘れてはいけない作品だと思う。戦争映画だからとかそういうことではなくて、純粋にアニメ映画における揺るぎない名作だという点において。

それにしてもみんなのトラウマ映画というのはある意味では名誉なことだ。本作を忘れることができる人はそうそういないだろうから。まるで消えない傷痕のように体のどこかに深く刻みつけられ、その痕を見る度に私たちは清太と節子を思い出してしまうのだから。
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