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大洗にも星はふるなりのワシのネタバレレビュー・内容・結末

大洗にも星はふるなり(2009年製作の映画)
3.0

このレビューはネタバレを含みます

あえて苦手なタイプの作品を観てみる試み。
3作目の今回は、ワシが苦手とする福田雄一監督の作品。

福田監督作品によくみられる、佐藤二朗やムロツヨシらをフィーチャーした独特のノリが、以前からどうも合わないんだよなぁ…。
これまでに『勇者ヨシヒコ』シリーズや『今日から俺は!!』とかも観てみた。
でも、やはり合わなくて途中離脱。

それで「これはもう相性が悪いから無理!」ってことで、ワシの中では苦手認定となった。
この機会に再挑戦しようと思い、なんとなく選んだのが本作『大洗にも星はふるなり』。

これが吉と出るか凶と出るか…。
まぁダメなら仕方ないな、くらいの気持ちで観始めた。

この夏、海の家「江の島」でアルバイトした青年たちと中年の店主が、クリスマスイブの夜に閉業中の海の家に次々と集まってくる。
彼らは、一緒にアルバイトした美女・江里子から「イブの夜に海の家で会いたい」という、同じ内容の手紙をもらっていた。
てっきり自分だけが江里子とのイブの夜を過ごせると思っていた男たちは、それぞれが「江里子が会いたがってるのは自分だ!」と主張して揉め始める。
そこへ海の家の撤去命令を持った弁護士が現れ、事態はさらに混乱していく…といった流れのお話。

本作は、茨城県大洗の海の家を舞台にしたワンシチュエーションコメディ。
福田監督作の戯曲が原作ということもあり、確か舞台劇らしい印象。
しかも単に舞台劇っぽい映画というよりも、ガチの舞台劇そのものを映像にしたような内容になってる。

とにかく舞台劇さながらの空気感やライブ感といったものが、画面からビンビン伝わってくる。
一般的に映画撮影では、カットが変わるごとに演技が止まり、照明やカメラ位置を変えて、また演技と撮影が再開されると思う(もちろん例外もある)
ところが本作は、生の舞台劇の緩急や台詞回しが活かされ、演技の流れやノリを止めないような見せ方をしている。

もちろん通常の映画でも、演技の流れやノリが違和感なく繋がるよう撮影が行われてるだろう。
しかし緩急や抑揚の効いた台詞回しやリズミカルなかけ合い、そしてここぞという時の一気呵成な台詞の畳み掛けなどは、やはり舞台劇ならでは。

そうした、お客さんを前に披露される“生モノ”の様な演技が、この作品では上手に映像化されている。
多少台詞の言い回しを失敗したシーンでも、そのまま作中に使用さてるといったことからも、ノリや雰囲気を重視してるのがわかる。

で、作品を観てどうだったかというと、すっごく面白かった!
これまで観たことのある福田監督の作品は、独特のノリや笑いがしつこい印象があって、物語のテンポも悪い気がしてた。

ところがこの作品は全く違って、ワンシチュエーションながら話がどんどん展開して、勢いさえ感じる。
さらに笑いの部分も歯切れが良く、ワシ的には福田監督ってこういう作品も作るんだ!というほどの驚きがあった。

個性際立つ登場人物たちが、彼らの憧れの的である江里子を巡って、喧々諤々の主張を繰り広げる。
その様子がガチの舞台のようなノリとライブ感をもって披露され、次々と放たれる台詞の応酬に夢中にさせられた。
ただ、女性の容姿イジリは、今の時代だとアウトだね苦笑

この作品は目からウロコというか、ワシ的には思わぬ発見だったなぁ。
苦手だと思ってた監督の作品に、こんな面白い作品があったことが知れて、ほんとに良かった。

要するに、ワシが勝手に偏見や苦手意識を持ってたワケで…反省して考えを改めます。
そう思った作品でした。

余談。
その後、ムロツヨシと戸田恵梨香がドラマで夫婦役やるなんて、当時は誰も想像すらしてなかっただろうなぁ〜。
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