平田一

GOEMONの平田一のレビュー・感想・評価

GOEMON(2008年製作の映画)
3.9
※よく見たら700本目の映画レビューになりました。あと殆ど半年振りの邦画実写鑑賞です。

ド派手に安土桃山時代を装飾過多した世界観、天才型の五右衛門と努力型の才蔵と、史実と空想を盛り込んだ新手の戦国時代譚。評判が良くないのは何となく聞いていて、けれどボクは未見に等しい側であるので初鑑賞(書きたいお話の参考にしたかったのが大きいです)。

巻物と同じところに刀隠していたなんて、だったらアンタ気付くことが出来たんじゃ? って疑問とか、自分が撒いた種なのに子供に向かって「強くなれ」って、そもそも最初に謝罪するのが筋なんじゃ? って感情が五右衛門からとても感じ、ツッコミすらしましたね(心の中で)。

無責任な自由の謳歌、考えなしの行動が如何に最悪を招き、見境無しにあらゆるものを、人を奪ってしまうのか? そのツケを延々と支払っていく五右衛門は断じてヒーローなどではない。そう感じさせますね(もしかしたら監督はそれを描きたかったのかも…)。

だとしたらこの映画が試みているものは「戦国の大名たちのヒーロー像の破壊」とか「力だけを強さと信じる思想への否定」かも。丁度今公開中の映画『首』がそうだけど、大名は揃いも揃ってロクデナシの人でなし。大名と庶民の齟齬が目立つ「どうする家康」と、少しずつ戦国絵巻は変化し続けてるのかも。特に極悪非道のように誘導してきた秀吉が実際は“空腹”に踊らされてた百姓でしかなかったという描きかたはまあまあ好きな場面です(だとしてもこの秀吉、流石に装飾過多過ぎない?)。

とはいえど、シリアスに偏重しすぎているとこやクライマックスの行動がスゴく唐突すぎる(意味も分からなかった)のが頂けないところもあり、そこはマイナスでしたかね(テーマ曲に頼りすぎてるところもちょっと感じます)。

けどボクはこの映画、結構好きな方ですね。テーマがハッキリしているし、何より色んな見方も出来る作品に思うから、紀里谷和明さんって方の作家性も感じます。言うほど酷評されるようなクリエイターには思えません。一体何を、どこの部分で酷評されているんだろ…?

個人的には狡猾に時が来るのを待ち続ける家康役の伊武雅刀さんの芝居が好きなのと、実は一番庶民の声を代弁していた佐助役のゴリさんのお芝居がスゴく響きましたね。ラストシーンで見せたアレは非常に複雑な感情にどうしたら良かったのか、分からなくって混乱している佐助の気持ちを体現してて、良いキーパーソンでした。

あと大好きな「ウルトラマンガイア」に出てた頼れるオッサン・志摩貢に似ている役者さん(確かそこで演じているのは加賀谷圭という役者さん)がいましたか?
平田一

平田一