ブタブタ

GOEMONのブタブタのレビュー・感想・評価

GOEMON(2008年製作の映画)
3.8
【『CASSHERN』の感想が書き足りなかったので其方も含めた感想になります】

『CASSHERN』は大好きな映画で『イレイザーヘッド』『エイリアン』『エル・トポ』と並び今迄何度も見返してます。
『CASSHERN』の半分はデザイナー庄野晴彦氏の力によるものだと思っているのですが、GOEMONもCASSHERNに負けずその独特の世界観は続いていました。
だから『ラスト・ナイツ』を見た時の失望感ったら無かったのですが、例えるなら『イレイザーヘッド』『エレファントマン』と来て『デューン砂の惑星』を見た時のがっかり感でしょうか。

紀里谷監督作品の魅力は過剰な迄の画面1枚に詰めこまれた情報量の多さや、これまたまるで現実離れしたアクション、最後は自分の主張を展開する大演説大会。
CASSHERN・GOEMONの2作品で紀里谷監督の作風はもうこれでこのままずっと行く、批判は多いもののカルト作家として、個性的な作品を作りつづけると思っていたので繰り返しますがラスト(略)を見た時のがっかりさはありません。

紀里谷監督のPV作品は見てないのですが、一枚の見たい絵があってそこに至るまでのストーリーなりアクションなりはあんまり重要ではなくて、リアリティ皆無説得力皆無、映画的な約束事やセオリーを無視して自分の撮りたい物だけ撮ると言うのは凄く素敵だと思いますし、紀里谷監督っていい意味で何も知らない、芸術で例えるならアーリュブリット(生の芸術=絵の教育を受けていない、絵のデッサンや基本を全く知らない作家及び作品)の作家でだからこ『CASSHERN』みたいなある種のトンデモ作品が出来上がったのだと思います。

一言でいうと舞台なんですよね。
それもセットではなく書割だけの舞台。
全部絵の中で人が動いている。
奥行きもない、立体感や世界の広がりがない。
人物はそこにいてアクションしたりピョンピョン跳ねたり糸で吊られて高速で足を動かして走る真似をしてるだけ。
実際グリーンバック合成で俳優は殆どその場を動かずアクションや芝居をしている様ですが、それによって奇妙なスピード感や異世界感が出て独特の映像が出来上がっている。

70年代タツノコアニメの実写化としては『スピードレーサー』がありますが、あれもリアリティ皆無の人間とCGの背景の合成。
しかしCASSHERNの方がよりチープで昔のアニメっぽいと言うか、人物はその場を動かず書割の背景だけが高速で動いて人物の動きをだしている。
操り人形の様にピョーンと天高く飛んだり走ってる動きをして高速で背景が流れて行く。
全てがそんな感じ。
貶しているのではなくて、舞台と紙芝居の融合の様な実写なのに昔のアニメ的でもあり寺山修司の実験映像的でもある(紀里谷監督は多分寺山修司なんて見てないし興味もないだろうな…)独特な世界を作り出していたと思います。

その意味では紀里谷監督デビュー作で最高傑作のCASSHERNに続くGOEMONは(自分にとって)紀里谷監督最後の作品でした。
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