藻尾井逞育

ファンタスティック Mr.FOXの藻尾井逞育のレビュー・感想・評価

ファンタスティック Mr.FOX(2009年製作の映画)
3.5
「立派なキツネと呼ばれたいんだ。"すばらしき父さんギツネ"と。」
「野生はおれの真の姿なんだ。」

妻と息子のために泥棒稼業から足を洗い、今は新聞のコラムニストとして働くキツネのミスター・フォックス氏。生活向上を願い、丘の上の家を購入するが、そこからは腹黒い三人の人間の農場が見える。フォックス氏の野生の血が呼び起こされ、再び人間との闘いが始まる⁈

ロアルド・ダールの児童文学をストップモーション・アニメにしたコメディです。主人公以外の登場人物(動物?)たちも、父親になかなか認めてもらえずこじらせ中の息子アッシュや、イケメンでスポーツ万能だけどそれゆえにアッシュから目の敵にされる従兄弟のクリストファソンといったように、やたらキャラだちしてます。他のウェス作品同様、ここでも大人になりきれない父親と、父親に認めてもらいたい息子の二人を中心とした家族の再生が描かれています。
構図やディテールにやたら凝る監督ですが、今回はアニメということもあり、アッシュの強盗マスクが靴下を利用した手作りだったり、最後のシーンがまるでクレーン撮影したような引きの映像だったり、穴掘りのユーモラスな動き等も含め、いつも以上に監督の脳内イメージを忠実に再現することを楽しんでいるみたいです。 
映画の中で、遠くに幻のオオカミを見つけ、互いに手を振るのではなく拳を突き上げるシーンは、これから訪れる野生の厳しさとお互いの孤独を認めあっているかのようで、思わず感動してしまいました⁈