このレビューはネタバレを含みます
容疑者Xの献身。タイトルが良くて気になっていた作品。
ガリレオシリーズは未視聴ながらこれ1本でもキャラ同士の関係性がわかりやすい。
石神の役者さんの演技が素晴らしく「これじゃ冨樫が石神に代わっただけじゃない！」の流れは花岡と共に騙されてしまった...
「あの問題を解いても誰も幸せにならない」
「もう忘れてくれ」
この言葉は湯川にだけじゃなく花岡や美里にも向けていたのかな。
客観的に見ると「自首して全てを無駄にした花岡は馬鹿だ」と感じたりもするけれど、普通の精神の人間は3人分の罪を背負って素知らぬ顔で普通の生活をおくるなんてことは無理だよなぁ。
そもそも犯罪を完璧にしたいのであれば別れ際にあんな同情を誘うような手紙を渡すべきではなくて、石神は見返りを求めていないつもりでも無意識のうちに「自分の心を知ってほしい」というささやかな感情は生まれていたのかもしれない。
単純に人の心を甘く見た誤算の可能性もあるけれど、「あなたに感謝しているのです」という最後の手紙のシーンで映った黄色いパンジーの花言葉が「私を想って」「つつましい幸せ」なのがまた...
それも含めて「彼はどんな感情を抱いていたのか」と考察させる、様々な想いが混ざりあったように慟哭する石神(の演技)は素晴らしかった...
人を愛するという感情を知らなければ罪を犯すことはなかった。でも彼は感謝しているんだよね。
「誰も幸せにならない」
たしかに決してハッピーエンドではないけれど、彼の心に一筋の救いはあったのかもしれない。
最初から最後まで美しい話だった。
