ねまる

ミスティック・リバーのねまるのレビュー・感想・評価

ミスティック・リバー(2003年製作の映画)
3.7
物語の姿を掴むより、
この街やアメリカの姿を掴もうとするより、
これは"演技バトル"だ、と思った。

役を通して、一人一人の役者が、
インスタで30秒とかの名場面で出てきそうな演技をずっとしている。
役者にもタイプがあるのか、しばらくイギリス作品ばかり観ていたからか、
最初は少し違いに、驚いてしまったのかもしれない。

傷ついた心に繊細な感情の変化。
表情声色、それを切り取るカメラワーク。

娘を亡くした時の、ショーン・ペン。
大切な人を亡くすシーンは、名シーンであることが多いが、ベランダの椅子でデイブに吐露するシーンなど、血の気の多い前科者の顔とは違う顔を見せ、彼の役を強く知らせてくれた。
ショーン・ペンに魅せられるのか?と思った。

違った。ティム・ロビンス。
後半はすっかり私はティム・ロビンスの虜だった。くたびれて、ボロボロの男の、きちんと言葉には出さない裏に、何を抱えているのか。
電気の消えた家で吸血鬼の話をするシーン。恐ろしかった。
そこまで抱えていたものの正体が、影となって暴れているような、叫んでいるような。デイブの過去にあるものの正体を実体ではなく感覚として知った気がした。
もう、後半は、ティム・ロビンスしか観ていない。
ショーシャンクの人、としか記憶してなかったことを後悔した。
今作のインタビューで嬉しそうに、子供達が家で待つ時に見られるフィギュアになるために、アクション映画に出たいと笑うティムの姿には、どこにもデイブは感じられなかった。

ある街で育った三人の少年。
ある1日の出来事が、宿命を分け、
一生を左右することとなる。

大人になった少年たちと、
それぞれの妻。

互いへの優しさで、踏み込まない境界は
相手の関係を守ることにもなるが、
いざという時相手のことを信じられないものなのかもしれないと思った。
それは優しさじゃなくて、相手の全てを知るのが怖いだけなのだ。

ある1日のその出来事は、
その後の悲劇を決定づける運命だったのだろう。
分岐点は、あったのだろうか。
ねまる

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