同名の古典文学の映画化ではヒュー・ジャックマン主演のミュージカルの方が有名だが、本作は「逃亡者と追跡者との対決」というサスペンス要素に絞ったシンプルな調理法で割と短く纏めている。悔悛した逃亡犯、市長に出世して善政を敷き、死に瀕した女の娘を育て、やがて成長した娘の愛する男を助けて、自分は覚悟を決めて別離する、というプロットでジャン・バルジャンをリーアム・ニーソンが演じるのは好適。ジェフリー・ラッシュ演じる冷血非情なコンピューターのごとき法の執行人ジャベールが神のような慈悲のために行動指針がバグって自ら死を選ぶという切り口も明快。見るからに薄幸で父なし子のため娼婦に身を落とし病に倒れすぐ死ぬユマ・サーマンなども良い配役だし、美術や時代考証も手抜かりなく普通に良く出来ていると思う。もっとも本来コース料理のところをカジュアルなワンプレートランチにして出された感じはせんではないのだが……